
教育学オリエンテーション
教育の本質
人はどのように育ち、社会はその学びをどう支えるのか
教育学 kiki
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本講の道筋:教育の意味から、公教育の課題へ
「人が学ぶこと」と「誰かが教えること」の関係を手がかりに、教育の意味を考える。そのうえで、学びを支える学校がなぜ制度として設けられ、どのような社会的役割を担ってきたのかを検討する。
本講では、次の四つの問いに沿って理解を深める。
段階
中心となる問い
学ぶ内容
Ⅰ 教育と人間形成
人は何を通して育つのか
教育・学習・社会化・生涯学習
Ⅱ 学校という制度
学校は何を可能にし、どのような課題を生むのか
公教育、学校機能、文化資本、脱学校論
Ⅲ 権利と公共的責任
誰の学びを、誰が保障するのか
学習権、子どもの権利、教育の公共性
Ⅳ 現代の教育課題
多様な学びをどう支えるのか
不登校、学校外の学習、参加、教育政策
到達目標は、教育学の基本用語を説明し、それらを用いて学校・家庭・地域の具体的な問題を論じられるようになることである。
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日本の学校段階と、教育学の見取り図
現在地|見通しと日本の学校制度
日本の標準的な学校系統は小学校6年―中学校3年―高等学校3年―大学4年(6・3・3・4制)で、義務教育は小・中学校の9年間である。大学院では、標準修業年限2年の修士課程、5年の博士課程を基本とし、博士課程を前期2年・後期3年に区分する場合、前期は修士課程に相当する。医・歯・獣医・6年制薬学などには別の課程構成がある。
日本語の「研究生」は、研究や正規課程への準備のために在籍する非正規学生の身分で、中国語の「研究生」と同じ意味ではない。本講座で目指す修士課程・博士前期課程への入学と区別する。JASSO「大学院」
教育学の問い
主な分野の例
教育は何を目指すか/どう変遷したか
教育哲学・教育思想・教育史
誰が何を、どのように学ぶか
教育課程・教育方法・教育心理
学校は社会の中でどう働くか
教育社会学・比較教育
誰が制度・人員・財政を整えるか
教育行政・教育政策
主張を何に基づいて確かめるか
教育研究法・教育評価
出典:文部科学省「新教育制度の具現」「修士課程・博士課程の関係について」。本頁は制度理解の導入。学校系統図・6-3-3制/大学院課程
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この分類は分野の全体像を示す入口であり、本講座全体を一つの授業で網羅するものではない。以後は思想・歴史・制度・政策の知識を、教育課程や学習の事例に結びつける。

Ⅰ 教育と人間形成
次の小節:教育・学習・人間形成・社会化の関係を整理し、教育の目的とデュルケームの社会化論を確認する。
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現在地|Ⅰ 教育と人間形成
Ⅰ 教育・学習・人間形成・社会化の関係
概念
基本的な意味
教育(Education)
一定の目的や価値に照らして、他者の学習・発達・人間形成に働きかける営み
学習(Learning)
経験や活動を通して、知識・技能・理解・態度などが変化する過程
人間形成
生活、文化、他者との関係を通して、人格・価値観・自己理解・生き方が形成される過程
社会化(Socialization)
社会や集団の言語・規範・役割・行動様式を身につけ、その成員として関わるようになる過程
教育という概念では、働きかける側の目的や活動に、学習という概念では、経験を通して学習者に生じる変化に注目する。教えた内容がそのまま学ばれるとは限らず、教師が意図しなかった価値や行動様式が学ばれる場合もある。人間形成と社会化は、意図的な教育活動を含め、日常生活のさまざまな経験を通して進む。
解説メモ|同じ出来事を、異なる側面から捉える
学級で話合いの進め方を教えることは教育にあたり、生徒が相手の理由を聞いて自分の説明を修正できるようになることは学習として捉えられる。こうした経験を重ね、他者とともに問題を考える姿勢が身につく過程には、人間形成や社会化の側面もある。四つの概念を用いることで、一つの出来事について、働きかけ、学習者の変化、人格の形成、集団への関わりを区別して説明できる。
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現在地|Ⅰ 教育と人間形成
教育の目的には、望ましい人間像が含まれる
教育では、何を身につけることが望ましいかを判断し、その実現に向けて内容や方法を組み立てる。この判断には、どのような人間や社会を望むのかという価値観が含まれている。
例えば、「自分で判断できる人」「他者と協力できる人」「社会に必要な仕事を担う人」「既存の制度を問い直せる人」は、いずれも教育の目標になり得る。これらを具体化する場面では、従順さと批判的判断、競争と協力、将来への準備と現在の生活の充実を、どのように両立させるかが問われる。
教育目的を具体化する三つの問い
誰にとって望ましい人間像なのか、どのような生活や社会を想定しているのか、学習者自身の希望をどう位置づけるのか。
解説メモ|「社会に役立つ人材」の中身を考える
人材育成には、仕事に必要な能力を身につけ、生活を支えるという意味がある。ただし、現在の産業や組織が求める能力に教育目的を絞ると、文化を楽しむことや他者と暮らすこと、社会の問題を批判的に考えることが扱われにくくなる。教育目的を説明する際は、育てようとする能力を挙げ、その能力がどのような生活や社会参加を可能にするのかまで示す。
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現在地|Ⅰ 教育と人間形成
学びは、学校・生活・人生全体に広がる
類型
組織の特徴
例
フォーマル教育
公的に認められた正規の教育体系を構成する、制度化・計画化された教育
学校の教育課程、大学の学位課程
ノンフォーマル教育
正規の教育体系を補完するなどの形で行われる、意図的・計画的な教育
市民講座、非学位の研修、地域の学習事業
インフォーマル学習
制度化された教育活動の外で、本人の生活・仕事・関心に沿って行われる学習
自主的な読書、仕事上の問題を調べる学習
生涯学習(Lifelong Learning) は、これらを含め、人が生涯を通して多様な場で学ぶことを捉える概念である。
解説メモ|教育の組織のされ方と、学ぶ場所を区別する
大学の教室で行われる市民講座でも、学位課程とは別に組織されていればノンフォーマル教育にあたる。一方、自宅で受講する正規の大学授業はフォーマル教育に含まれる。このように、分類の基準となるのは教育がどのように組織されているかであり、学ぶ場所とは区別して考える。学校・職場・地域を往復する学習を説明する際にも、この区別が役立つ。なお、UNESCOのISCEDでは、インフォーマル学習と偶発的な学びも区別している。
出典:UNESCO Institute for Statistics, ISCED 2011(教育プログラムの分類と用語)。UIS Glossary/UNESCO-UNEVOC「Informal learning」:ISCEDの定義を掲載
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現在地|Ⅰ 教育と人間形成
デュルケーム:教育を「社会化」として捉える
デュルケーム(Émile Durkheim)
『教育と社会学』では、教育を、成人世代が社会生活に向けて成長の途上にある世代に働きかける営みとして捉えた。
社会生活に必要な言語、道徳、協力の仕方などは、人が他者と生活するなかで身につけていく能力や態度であり、教育は、それらを次世代に育てる役割を担う。
育てる内容には、社会の成員に共通して必要な基盤と、職業や生活領域に応じて求められる能力・態度の両方が含まれる。
解説メモ|個人の成長が、なぜ社会の問題になるのか
読み書きや他者への配慮は、本人の能力であると同時に、人々がともに生活するための基盤でもある。デュルケームの視点からは、学校で育てられる能力や規範を、その社会で必要とされる関係や役割と結びつけて理解できる。現代の多文化社会に当てはめると、誰の文化や経験をもとに「共通に必要なもの」を定めるのかという問いが生まれる。
出典:Durkheim, Éducation et sociologie(1922)。Project Gutenberg
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Ⅱ 学校という制度
次の小節:近代学校が教育を公共制度にした過程と、学校の機能・隠れたカリキュラム・文化資本・脱学校論を扱う。
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現在地|Ⅱ 学校という制度
Ⅱ 近代学校は、教育を継続的な公共制度にした
学校は近代以前にも存在し、家庭・地域・宗教団体や仕事の場も人間形成を担っていた。近代学校の特徴は、生活や仕事への参加を通した学びに加え、共通の教材・教育課程・教員を整え、多数の子どもの学習を継続的に組織した点にある。
印刷物の普及、国民国家の形成、産業化などが進むなかで、読み書きや共通の知識を広く教える必要が高まり、各国は学校配置・財政・就学の制度を整えていった。成立の時期と経路には違いがあり、一つの思想や発明だけで近代学校が完成したわけではない。
制度化されたもの:教育上の意味
学年・学級・時間割:多数の子どもの学習を継続的に組織する
教科・教育課程:社会が継承する知識を選び、順序づける
教員養成・資格:教える者の専門性を制度的に支える
学校設置・財政:家庭での準備が難しい教育条件を公共的に整える
試験・修了資格:上級学校や職業へ進む経路を整える
解説メモ|普及と共通化は同じ過程で進む
全国的な学校制度は、地域や家庭による学習機会の差を小さくする可能性を持つ。その普及にあたっては、共通に教える知識や言語、望ましい振る舞いも選ばれるため、教育の拡大と内容の標準化が同時に進む。近代学校を理解するには、学ぶ機会が誰に広がったのかと、何が共通の教育内容になったのかをあわせて捉える。この関係が、後の学校批判でも問われることになる。
日本の制度形成は「日本教育改革Ⅰ―近世から戦前まで」「日本教育改革Ⅱ―戦後改革から現在まで」で詳しく扱う。日本教育改革Ⅰ_近世から戦前まで
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現在地|Ⅱ 学校という制度
公教育を支える義務性・無償性・世俗性
近代公教育を理解する代表的な整理に、義務性・無償性・世俗性という三つの原則がある。それぞれが保障しようとする内容を押さえたうえで、各国における成立過程や制度の違いを考える。
原則
支えようとすること
義務性
家庭の事情や判断に左右されず、子どもが基礎的な教育を受けられるようにする
無償性
経済的負担が基礎的な教育への参加を妨げない条件を整える
世俗性・宗教的中立性
特定の宗教的権威による独占を防ぎ、異なる信仰を持つ人々がともに学べる条件を整える
解説メモ|三原則は、教育へのアクセスと自由を支える
義務教育には、子どもが基礎的な教育を受ける権利を社会として保障する意味があり、無償性は、その教育費を誰が負担するかという公共的責任に関わる。世俗性・宗教的中立性を考える際には、宗教について知識を学ぶことと、特定の信仰へ導くことを区別する。日本でこれらの原則がどのように制度化されているかは、憲法や教育基本法の規定に即して確認する。
出典:日本国憲法第20・26条、教育基本法第5・15条。衆議院
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現在地|Ⅱ 学校という制度
学校の機能:学習・社会化・文化・選抜・生活保障
学校の機能
具体的な働き
学習保障
知識・技能・思考を体系的に学ぶ機会をつくる
社会化
他者と生活する規範、協力の仕方、役割を学ぶ
文化の継承・再構成
言語・歴史・文化を受け継ぎ、その意味を考え直す
選抜・配分
成績、資格、進学を通して、職業や社会的地位への移行に関わる
生活・権利保障
健康、安全、食事、相談、居場所を支え、福祉につなぐ
解説メモ|一つの改革は、複数の機能に作用する
オンライン授業を増やすと、教材を利用する方法や学習の進度を調整しやすくなる一方、友人との関係や質問のしやすさ、家庭での学習場所、困難を発見する機会にも変化が生じる。学校の役割を論じる際は、こうした機能ごとの変化を確かめ、誰がどの条件を保障するのかを考える。その検討を通して、対面で学ぶことの意味も具体的に説明できる。
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現在地|Ⅱ 学校という制度
隠れたカリキュラム:日常の慣行が人を形成する
隠れたカリキュラム(Hidden Curriculum)
正式な教育課程に示された目標とは別に、学校の制度、慣行、評価、人間関係を通して学習される価値・規範・行動様式を指す。ジャクソンの『教室の生活』(1968年)は、こうした学校の日常生活を考える重要な著作である。
生徒は、どのような発言が認められ、どの行動がほめられるかを経験しながら、「学校で望まれる振る舞い」を学ぶ。時間の管理や役割分担、失敗への対応にも、価値や規範が表れる。
解説メモ|規範が伝わる仕組みを説明する
教師が「自由に考えよう」と述べても、予定された答えに近い発言を繰り返し評価すれば、生徒は自分の疑問を述べるより、期待された正答を推測するようになる可能性がある。この場合、行動を方向づけているのは、日常の評価や応答を通して伝わる規範である。ジェンダーによる役割分担、外国につながる子どもの発言機会、校則への従い方なども、同じ視点から検討できる。
出典:Jackson, Life in Classrooms(1968)、シカゴ大学図書館の著作紹介。芝加哥大学图书馆
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現在地|Ⅱ 学校という制度
文化資本:家庭で得た経験が学校の評価と結びつく
ブルデュー(Pierre Bourdieu)
文化資本は、文化的な知識・能力・資源が、社会的な評価や有利な立場を得ることに結びつく仕組みを捉える概念である。
形態
例
身体化された文化資本
言葉の使い方、文化的な経験、知識、身についた振る舞い
客体化された文化資本
書籍、美術作品、楽器などの文化的な物
制度化された文化資本
学歴や資格として社会的に認められた能力
解説メモ|文化の違いが、能力の違いとして見える過程
学校が特定の語彙や説明の仕方、文化経験を前提に授業を進めると、それらに親しんできた生徒は課題に取り組みやすい。その違いが成績や進学に表れたとき、家庭で得た条件の差が、本人の才能や努力の差として理解されることがある。文化資本の概念を使うと、家庭の文化的資源が学校でどのように評価され、学歴や資格に結びつくのかを説明できるため、費用と文化の両面から教育格差を検討できる。
出典:Bourdieu, “The Forms of Capital”(1986)。Routledge Social
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現在地|Ⅱ 学校という制度
イリイチの脱学校論:学校化された社会への批判
イヴァン・イリイチ(Ivan Illich)
『脱学校の社会』(1971年)は、学校への参加や資格の取得が、学習や能力そのものと同一視される社会を批判した。長く学校に通い、上の学年へ進み、卒業証書を得ることが教育の豊かさや能力の証拠とされると、学校外で得た経験や知識は評価されにくくなる。
批判の焦点
学校が学習機会を独占し、制度的な資格が学習の価値を決める仕組みを問う。
解説メモ|学習と資格、教育サービスの関係を問う
地域で活動を企画・運営してきた若者が、学校の資格を持たないために能力を認められにくい場合、社会が何を能力の証拠として扱っているのかが問われる。イリイチの批判は、学校の存廃に加え、学習の価値を資格で判断することや、教育サービスの消費を学習と同一視することに向けられている。そのため、学ぶ場所を学校外へ移した場合にも、同じ問題が残るかを検討できる。
出典:Illich, Deschooling Society(1971)。The Anarchist Library
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現在地|Ⅱ 学校という制度
学習のネットワークと、公共的な支援
イリイチは、学びたい人が必要な資源や他者と結びつける仕組みとして、学習のネットワークを構想した。
接続する資源
具体的な内容
学習に使う物・場所
道具、資料、施設、自然や文化資源
技能を持つ人
自分の知識や技能を他者と共有する人
共に学ぶ仲間
同じ関心や課題を持つ学習者
教育的な助言者
学習の見通しや進め方について支援する人
解説メモ|現代への応用として考えること
オンライン講座や地域の学習活動によって学校外の資源は利用しやすくなるが、情報を探す力や利用料、移動時間、相談相手を確保できるかによって、実際に活用できる機会は異なる。本講では、脱学校論を手がかりに、学ぶ自由を実現するための公共的な条件を考える。不登校支援、社会教育、学び直しについても、どの資源があるかと、誰がそれを利用できるかを結びつけて検討できる。
出典:Illich, Deschooling Society, “Learning Webs”。現代への接続は本講での考察。The Anarchist Library
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現在地|Ⅱ 学校という制度
教育の公共性:運営主体と、保障する価値を分ける
教育の公共性を考える際には、公立・私立という設置者の区別を押さえたうえで、誰が利用でき、どのような学習を保障し、社会に対してどのような責任を負うのかを検討する。
観点
問われること
利用可能性
経済、地域、障害、言語等によって機会が閉ざされていないか
教育の内容
他者とともに生き、判断するための基盤を学べるか
意思決定
学習者、保護者、専門職などの意見をどう扱うか
責任
継続性、質、権利侵害への対応を誰が担うか
解説メモ|設置者の違いと、学習機会の保障を考える
公立学校でも、特定の子どもが参加しにくい慣行があれば、公共性の実現には課題が残る。民間の活動についても、重要な学習機会を提供していながら、費用や地域差によって利用できる人が限られる場合には、公的支援のあり方が問われる。学校外の学習を認める議論では、選択の自由と、その選択を実際に可能にする社会的な保障をあわせて考える。
関連規定:教育基本法第6・8条。文部科学省
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Ⅲ 権利と公共的責任
次の小節:憲法・教育基本法・子どもの権利条約・こども基本法から、教育を受ける権利と平等・公正を考える。
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現在地|Ⅲ 権利と公共的責任
Ⅲ 子どもは保護され、学び、意見を持つ存在である
学校には学習を支える働きと、選抜や排除を生む可能性がある。どの働きを、誰に対して保障するかを、権利の側から考える。
子どもをどのような存在として扱うかは、家族、労働、学校、法制度の変化と結びついてきた。近代以降には、子どもの発達に固有の時間を認め、保護と教育の対象として位置づける考え方が広がった。ただし、その時期や形は地域・階層・性別によって異なる。
子どもの権利条約は、必要な保護を受けることと、自分に関わる事柄について意見を表すことをともに保障する。子どもは、心身の発達と生活を支える保護を必要としながら、生活に関わる決定に参加する権利主体でもある。
三つの側面をつなぐ
保護される存在:安全、健康、養育、休息を保障する。
学び発達する存在:知識や文化に接し、他者との関係を築く条件を整える。
権利を持つ存在:意見を表し、その意見が尊重される機会を保障する。
解説メモ|保護と参加の関係
大人が「本人のため」と考えた支援でも、本人の困難や希望を十分に聞かなければ、必要とされる内容からずれる場合がある。例えば、不登校支援で学校復帰の時期を先に決めると、本人が回復や学習をどう考えているかを捉えにくい。子どもを権利主体として捉えることは、必要な保護を保障しながら、本人の経験や意見をもとに支援の内容を考えることにつながる。
出典:子どもの権利条約第3・6・12・28条。日本外务省
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現在地|Ⅲ 権利と公共的責任
憲法第26条:教育を受ける権利と受けさせる義務
日本国憲法は1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行された。第26条は、教育を受ける権利、保護する子どもに普通教育を受けさせる義務、義務教育の無償を規定している。
権利・義務・責任の担い手を区別する
学習者には、教育を受ける権利がある。
保護者には、子どもに普通教育を受けさせる義務がある。
国や地方公共団体には、法制度を通して教育条件を整える責任がある。
解説メモ|義務教育を権利保障から理解する
義務教育制度は、家庭の経済状態や判断に左右されず、子どもが学べるようにする仕組みとして考えられる。授業料を徴収しないこととともに、教材や通学の費用、健康や障害に応じた支援も、実際に教育を受けるための条件となる。答案では、「教育を受ける権利」の内容を説明したうえで、その権利を行使するために誰がどの条件を整えるのかまで論じる。
出典:日本国憲法第26条、教育基本法第5条。衆議院
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現在地|Ⅲ 権利と公共的責任
教育基本法:目的・目標・制度を結びつける
旧教育基本法は1947年3月31日に制定され、2006年12月22日には、全部改正された現行法が公布・施行された。
第1条は、人格の完成と、平和で民主的な国家・社会の形成者の育成を教育の目的に掲げ、第2条は、その実現に向けた目標を具体化している。
第2条の主な目標
内容のまとまり
第1号
知識・教養、真理の探究、道徳心、健康
第2号
個人の能力、創造性、自主・自律、職業と生活
第3号
正義、責任、男女平等、協力、公共への参加
第4号
生命、自然、環境の保全
第5号
伝統・文化、国と郷土、他国の尊重、国際的な平和
解説メモ|教育目的を、知識・生活・社会との関係から理解する
人格の完成には、道徳性に加え、知的・身体的な発達や社会への参加も関わる。第2条の目標を読む際には、公共の精神を育てることが、個人の尊厳や多様な価値観の尊重とどのように結びつくかを考える。法文の内容を授業、学校生活、支援制度の具体的な場面に照らすことで、教育目的がどのように実践されるのかを説明できる。
出典:教育基本法第1・2条。文部科学省
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現在地|Ⅲ 権利と公共的責任
子どもの権利条約:教育と参加の権利を保障する
子どもの権利条約は1989年11月20日に国連総会で採択され、日本は1994年4月22日に批准した。
一般原則
教育との関係
差別の禁止
背景や状態によって権利の保障を狭めない
子どもの最善の利益
子どもに関わる決定で、その利益を主要に考慮する
生命・生存・発達
学習とともに、安心して育つ条件を保障する
意見の尊重
自分に関わる事項について意見を表し、その意見が考慮される
第28条は教育を受ける権利、第29条は人格・能力の発達、人権の尊重、社会生活への準備などの教育目的を扱う。
解説メモ|子どもの意見から、教育の課題を捉える
校則や学習支援について子どもの意見を聞くと、大人が想定していた問題と、本人が経験している問題との違いが見えてくることがある。意見表明の機会は、方針への賛否を確かめるとともに、何を問題として扱うかを子どもと考え直す場にもなる。どのような支援があれば学べるのかを本人と検討することで、学習権と参加の権利を結びつけて捉えられる。
出典:子どもの権利条約。日本外务省
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現在地|Ⅲ 権利と公共的責任
こども基本法:意見を政策へ反映する仕組み
こども基本法は2022年6月に成立・公布され、2023年4月1日に施行された。子どもの権利条約の精神に則り、こども施策を総合的に推進するための基本法である。
主な内容
子どもを個人として尊重し、基本的人権と適切な養育・生活・教育の条件を保障することを基本理念に置く。意見表明と参加の機会を確保し、意見と最善の利益を尊重するとともに、家庭への支援や社会全体で子育てを支えることを掲げている。
第11条は、国や地方公共団体がこども施策を策定・実施・評価する際、対象となるこども等の意見を反映するために必要な措置を講ずることを定める。
解説メモ|意見を伝える機会から、結果の説明まで
施策に意見を反映するには、内容を理解できる説明と、意見を伝える方法を用意し、検討に参加できるようにしたうえで、結果を説明することが必要になる。例えば居場所づくりでは、名称の投票に加え、利用時間や使いにくさ、相談の仕方を子どもの経験から検討できる。参加を研究する際には、どの子どもに機会が開かれ、その意見がどの決定に関わったのかを確かめる。
出典:こども家庭庁「こども基本法」。こども家庭庁
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現在地|Ⅲ 権利と公共的責任
平等と公正:共通の権利を、異なる条件の下で保障する
視点
中心となる問題
形式的平等
同じ権利・資格・一般的基準が適用されるか
実質的平等
条件の違いによって、権利を実際に行使する機会が失われていないか
公正(Equity)
障壁や必要性に応じた支援・資源配分を、どのような理由に基づいて行うか
仮想事例
全員に同じ授業資料を配布しても、視覚や言語、家庭の学習環境によって、理解するために必要な条件は異なる。資料の音声化、日本語支援、学習場所の提供などは、それぞれが共通の学習機会を利用できるようにする対応として考えられる。
解説メモ|支援の違いをどう説明するか
特定の人への支援は、その人が直面する障壁を示さなければ、「一部の人を優遇している」と受け取られる場合がある。どのような理由で学習機会が制限され、支援によって何が可能になるのかを説明すると、異なる対応を行う根拠が明確になる。公正を論じる際には、全員に保障する学習機会と、個々の困難に応じた支援との関係を示す。
関連規定:教育基本法第4条。文部科学省
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Ⅳ 現代の教育課題
次の小節:教育機会確保法、COCOLOプラン、エージェンシー、教育振興基本計画を通して現在の政策課題を読む。
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現在地|Ⅳ 現代の教育課題
Ⅳ 教育機会確保法:学びと休息を支える
正式名称は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律である。2016年12月14日に公布され、原則として2017年2月14日に施行された。
主な内容
安心して教育を受けられる学校環境を整え、不登校児童生徒の状況に応じた支援や学校外の多様な学習活動への支援を進める。その際の休養への配慮、夜間中学等での教育機会の確保、行政と民間団体等との連携も扱っている。
解説メモ|学校との関係を保ちながら、学びを支える
この法律は、フリースクールを一律に学校教育法上の学校とするものではない。不登校支援では、学校復帰の状況とともに、本人の休息、学習、生活、社会との関係を支えることが求められる。その具体化にあたっては、学校外での学習成果をどう認めるか、学校とどのように連携するか、利用費用や地域による選択肢の違いにどう対応するかが課題となる。
出典:文部科学省「教育機会確保法のあらまし」及び基本指針。文部科学省
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現在地|Ⅳ 現代の教育課題
COCOLOプラン:子どもの支援と学校の変化
文部科学省は2023年3月31日、不登校によって学びや支援から取り残される子どもを生まないことを目指し、COCOLOプランを公表した。
三つの柱
主な内容
多様な学びの場を確保する
学びの多様化学校、校内教育支援センター、教育支援センター、民間施設、ICT等
小さなSOSを見逃さない
相談、早期の気づき、チームによる支援、保護者への支援
安心して学べる学校をつくる
学校風土の把握、居心地の改善、児童生徒の声を踏まえた学校づくり
解説メモ|支援の場の整備と、学校の改善を進める
学校外や別室で学べる場を整えることは、現在困っている子どもへの支援になる。同時に、通常の学校で困難を生む関係や慣行を見直すことも、支援を必要とする状況が繰り返されるのを防ぐうえで必要である。COCOLOプランを読む際には、本人への支援、利用できる場の整備、学校そのものの改善が、どのように組み合わされているかを捉える。
2026年には取組事例集等も公表されている。
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出典:文部科学省「COCOLOプラン」及び関連資料。文部科学省

現在地|Ⅳ 現代の教育課題
エージェンシー:自分と周囲に働きかける力
OECDのLearning Compass 2030では、学習者が目標を設定し、行動し、その結果を振り返りながら、自分の生活や社会に働きかけることを重視している。
生徒エージェンシー(Student Agency)
活動の目的や意味を理解し、自ら判断して行動に関わること。
共同エージェンシー(Co-agency)
教師、仲間、保護者、地域の人々との関係を通して、互いの行動や学習を支え合うこと。
AARサイクル
見通す(Anticipation)→行動する(Action)→振り返る(Reflection)。
解説メモ|自分の学びと、学ぶ環境に働きかける
エージェンシーには、自分の学習を計画することとともに、学びにくさを教師に伝え、仲間と改善案を考えるなど、周囲の条件に働きかけることも含まれる。こうした行動は、本人の意欲と、それを受け止める他者や制度との関係のなかで可能になる。子どもの参加、探究学習、学校づくりを考える際には、誰がどのような判断に関わり、その行動がどう支えられているかを検討できる。
出典:OECD, Learning Compass 2030。OECD
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現在地|Ⅳ 現代の教育課題
教育振興基本計画:教育目的を政策へ展開する
第4期教育振興基本計画は、教育基本法第17条に基づく政府の計画であり、2023年6月16日に閣議決定された。対象期間は2023〜2027年度である。
二つの総括的コンセプト
持続可能な社会の創り手の育成。
日本社会に根差したウェルビーイングの向上。
学び続ける人材育成、共生社会に向けた教育、地域・家庭で共に学び支え合う社会、教育DX、実効性を支える基盤整備という五つの基本方針を掲げ、16の目標に具体化している。
2026年8月21日、中央教育審議会に第5期計画の策定が諮問された。これは策定開始を求める諮問であり、現行の第4期計画や、決定済みの第5期計画とは区別する。
解説メモ|ウェルビーイングを、学習と生活の条件から考える
ウェルビーイングには、達成感や自己実現に加え、安心や他者とのつながりも含まれる。教育との関係では、満足度を尋ねるとともに、子どもが学ぶ意味を見いだせるか、排除されずに参加できるか、困ったときに相談できるかを確かめる。学力の形成を、本人の生活や人間関係と結びつけて捉えるための政策的な視点となる。
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出典:文部科学省「第5期教育振興基本計画の策定について(諮問)」(2026年8月21日)。文部科学省

現在地|Ⅳ 現代の教育課題
授業の概念を、自分の研究関心へ結びつける
研究関心の入口
本講の概念から深められる問い
不登校やフリースクール
どのような学びが「学習成果」として認められ、その承認が学校との関係や本人の自己理解にどう関わるか
家庭背景と進路
家庭で得た情報・言語・文化経験が、学校の評価や進路の選択肢にどう関わるか
校則や生徒会
子どもは、ルールを守ることとともに、その理由の検討や変更にどのように関われるか
地域の居場所・社会教育
学校外の人間関係や活動は、学習、所属感、社会参加をどう支えるか
解説メモ|関心を教育学の問いに変える
「不登校を研究したい」という関心は、本人の心理状態や、学校がどの経験を学習として認めるかという制度の問題から検討できる。「生徒会を研究したい」という関心も、行事の運営と、学校の意思決定における子どもの位置を結びつけることで深まる。理論は、このように、関心のある対象について、どの関係を明らかにするかを具体化する手がかりとなる。
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現在地|Ⅳ 現代の教育課題
本講の結論:教育の自由と、学びを支える責任
本講で扱った教育、学校、権利の関係を振り返る。
人は学校以外でも学び、人間形成を進めている。その学びを継続的に支えるために制度化された学校は、共通の知識や社会参加の基盤を提供するとともに、標準的な文化や資格を通して人々を評価し、進路を分ける役割も担ってきた。
学校が提供する教育と学習者の必要を照らし合わせる際、子どもの権利や学習権は、本人の尊厳を守り、その意見や参加を踏まえて考えるための基準となる。
まとめの解説メモ
学びの場が多様になるほど、それぞれを利用できる条件にも目を向ける必要がある。費用や情報、交通、支援者の有無によって選択できる範囲は異なるため、学習者の自由と自己決定を支えるには、必要な知識や関係、生活条件を公共的に保障する仕組みが求められる。公教育の責任は、多様な場での学びを実際に可能にする条件の整備にも関わっている。
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演習・説明・論述
次の小節:複数選択問題、解説、小論文A・B、復習を通して、学んだ概念を使って考え、書く。
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現在地|演習・説明・論述
複数選択問題1:学びの自由を広げる改革を考える
本講座作成・仮想事例
ある自治体は、学校外での学習機会を増やすため、全家庭に同額のオンライン講座利用券を配布するとともに、地域の学習相談室を縮小する方針を示した。保護者からは、選択肢の拡大を歓迎する声と、「子どもに合う講座が分からない」「家では学習を支えられない」という声が出ている。
イリイチの議論と教育の公共性を踏まえ、適切な考察を二つ選びなさい。
A.学習資源を利用する機会が広がる点には意義があるが、相談相手や仲間に出会える条件も検討する必要がある。
B.同額の利用券が配られているため、家庭による学習条件の差は政策上の問題から除外できる。
C.学ぶ場を学校外へ広げても、既製の教育サービスを購入することが学習と同一視されれば、制度依存の問題が残る。
D.脱学校論を採用するなら、学習に関わる公的支援は縮小するほど望ましい。
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現在地|演習・説明・論述
複数選択問題2:同じ教室を二つの概念で読む
本講座作成・仮想事例
授業では、教師が評価する話し方に慣れた生徒が発言しやすく、家庭で別の言語や表現を使う生徒は、内容を理解していても発言をためらうことがある。また、教師は「自由な意見を歓迎する」と述べながら、予定した結論に近い発言を繰り返し高く評価している。
概念と現象の対応として適切なものをすべて選びなさい。
A.家庭で身につけた表現と学校の評価との関係を、文化資本の観点から検討できる。
B.隠れたカリキュラムは家庭内の学習だけを扱うため、この教室には適用できない。
C.評価の反復を通して「期待された答えを言う」行動が促されることを、隠れたカリキュラムの観点から説明できる。
D.文化資本の観点に立つと、学校側の教材や評価を変更する余地はなくなる。
E.二つの概念を用いることで、家庭から持ち込まれる条件と、学校内で形成される規範との関係を考えられる。
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現在地|演習・説明・論述
複数選択問題3:子どもの参加を、どこまで広げるか
本講座作成・政策検討課題
学校が校則の見直しに生徒参加を取り入れるにあたり、教職員会議で次の案が出された。安全を確保しながら子どもの意見を尊重するという観点から、採用する理由を説明できる案をすべて選びなさい。
A.学校が選んだ二案から投票させ、それ以外の問題提起は混乱を避けるため受け付けない。
B.校則の目的や制約を説明したうえで、生徒が困難を感じる場面を挙げ、変更案を検討できる機会を設ける。
C.意見を文章で書きにくい生徒にも、口頭や小集団で表現できる方法を用意する。
D.生徒の希望を尊重するため、権利や安全への影響について大人が説明することは控える。
E.採用しなかった提案についても理由を示し、実施後に再検討する機会を設ける。
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現在地|演習・説明・論述
複数選択問題4:不登校支援の方針を読む
本講座作成・仮想資料
教育機会確保法、COCOLOプラン、本講で学んだ教育概念を踏まえ、この市が取り組むべき課題として適切なものをすべて選びなさい。
A.支援の成果を、通常学級へ戻った人数だけで比較する。
B.本人の休息と学習を支えながら、学校内の環境や関係も改善する。
C.学校外の活動で育まれた知識や経験を、学校との関係のなかでどう認めるか検討する。
D.学校外の選択肢を設けた以上、費用負担は家庭の選択の結果として扱う。
E.利用条件の違いを把握し、費用面と情報面の支援を組み合わせる。
ある市は、不登校児童生徒が利用できる別室と民間施設を増やし、本人が安心して過ごし、学習を再開できることを支援の中心に置いている。一方、通常の教室のルールや評価方法は見直されておらず、学校外の活動を学習としてどう扱うかも学校によって異なる。利用費用を負担できず、希望する場へ通えない家庭もある。
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現在地|演習・説明・論述
複数選択問題5:研究関心を、教育学的な問題へ深める
本講座作成・研究課題の構想
「学校に通わない若者の学びに関心がある」という学生が、研究対象を具体化するために、本講の理論から問いを考えた。理論と研究課題が実質的に結びついているものをすべて選びなさい。
A.イリイチを手がかりに、学校外で得た技能や経験が、進路を選ぶ際にどのように認められるかを問う。
B.社会化の観点から、学校外の集団で仲間との関係や役割がどのように形成されるかを問う。
C.エージェンシーを、他者から援助を受けずに生活できる程度として捉える。
D.教育の公共性から、学びの場を選べる条件が家計や地域によってどう異なるかを問う。
E.学校に通っていないことを理由に、教育や人間形成の問題を研究対象から外す。
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現在地|演習・説明・論述
学習者の背景が学校の教材や評価とどう結びつき、参加や進路にどのような違いを生むのかを考える。
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現在地|演習・説明・論述
研究関心を深めるには、理論を手がかりに、対象のどの関係を明らかにしたいのかを具体化する。方法の選択は、その問いに即して考える。
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過去問A:学校教育の公共的な使命
東京大学大学院教育学研究科 2024年度入学試験
学校教育高度化専攻・教職開発コース/専門科目
Ⅰ 共通問題(必須)からの抜粋
元の試験の解答指示(関係部分)
「次の問のうち、Ⅰ共通問題(必須)に加えて、Ⅱ選択問題三問の中から二問を選び、合計三問について解答しなさい。」
「外国人受験者も日本語の文章で解答すること。」
原題
学校教育の公共的な使命について論じなさい。
出典:所蔵過去問『东大教育学 2024年度.pdf』PDF pp.69–70。過去問原文アーカイブ
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現在地|演習・説明・論述
小論文B:専門発展・材料型
教育原理・教育哲学・社会教育への発展/70分/1,200〜1,400字
材料:本講座作成。イリイチの問題提起を踏まえた論述用文章。原典の引用ではない。
設問
イリイチの脱学校論が何を批判したかを説明したうえで、学校外の学習を公的に支えることの意義と課題を論じなさい。現代の具体的な教育実践または政策を一つ取り上げ、学習の自由と社会的な保障の関係に言及すること。
学習の価値が学校への在籍や資格によって判断される社会では、学校外で身につけた知識や技能は認められにくい。オンライン学習や地域活動は、その評価のあり方を変える可能性を持つが、講座の購入や認定証の収集を中心に組織されれば、学習が制度的なサービスに依存する問題は残る。学校外の学習を考える際には、学びたい人が資源や他者と結びつき、その経験を生活や社会参加に生かせる条件を検討することが求められる。
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現在地|演習・説明・論述
復習:定義・関係・自分の関心をまとめる
必修の説明
教育と学習の違いを説明したうえで、社会化、隠れたカリキュラム、文化資本、脱学校論について、定義と具体例を述べる。また、教育を受ける権利が、公教育の条件整備とどのように結びつくかを説明する。
自分の研究関心に引き寄せる
「私が関心を持つ教育問題は何か。その問題は、本講のどの概念を用いると、何と何の関係として捉えられるか」を200字程度で書く。
授業後の課題の選択
まず過去問Aに取り組み、教育原理、教育哲学、社会教育を志望する学生は、本講作成の小論文Bにも進む。
関連授業|近代以降の教育思想
個人の自由、教師の働きかけ、社会の形成を、教育思想家がどのように説明してきたかを学ぶ。
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