
日本教育改革Ⅱ
――戦後改革から現在まで
共通の教育を広げることと、多様な学びを保障すること
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本講の流れ:制度の民主化から、学びを支える条件へ
戦後の教育改革では、教育目的、学校体系、教育行政、教育内容が組み直された。その後、高校や大学への進学が広がり、学校が担う役割も増えるなかで、受験競争、学習上の困難、教育の画一性、教育機会の差が改革の課題となった。
本講では、知識の習得や「ゆとり」をめぐる議論を、それぞれの改革が共通に保障しようとした教育と、子どもの違いに応じて調整しようとした条件に即して考える。
段階
中心となる問題
Ⅰ 戦後改革
民主的な社会を支える教育制度をどうつくるか
Ⅱ 教育拡大
共通の制度のなかで、選抜や格差がどう生じるか
Ⅲ 学力観の変化
知識・経験・主体性をどう結びつけるか
Ⅳ 現在の改革
多様な子どもの学びを、どのような条件によって保障するか
到達目標は、改革の背景・内容・教育上の意味を説明し、現代の教育課題をその歴史的な経緯と結びつけて論じられるようになることである。
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全体年表:四つの改革過程をつなぐ
現在地|見通しと改革の時期
年・時期
主な改革
検討する問題
1946〜1949年
憲法、教育基本法、新学校体系、教育委員会制度
権利・民主化・機会均等
1956年
地方教育行政法
地方自治と行政の統一
1958〜1960年
学習指導要領の改訂
全国的基準と系統性
1968〜1970年
教育内容の現代化
学問の進展と学習負担
1977〜1978年
内容の精選と「ゆとり」
理解と学校生活の充実
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」ほか。文部科学省
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全体年表:四つの改革過程をつなぐ(続き)
現在地|見通しと改革の時期
年・時期
主な改革
検討する問題
1984〜1987年
臨時教育審議会
個性、生涯学習、社会変化
1989年
生活科、新しい学力観
自ら学ぶ力と評価
1996〜2002年
生きる力、総合的な学習、完全学校週5日制
学校・家庭・地域の役割
2006〜2009年
教育基本法改正、学力調査、教育課程改訂
教育目標と学力保障
2017年以降
資質・能力、GIGA、令和の日本型学校教育
学びの質と多様性
学習指導要領の改訂年と全面実施年は異なる。以後のページでは、改訂内容と実施時期を対応させて確認する。
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」ほか。文部科学省
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Ⅰ 戦後改革
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Ⅰ 占領政策と日本側の構想から進められた戦後改革
現在地|Ⅰ 戦後改革
敗戦後の改革では、戦時教育の解除と、新しい制度の建設が進められた。1945年にGHQが出した四つの教育指令は、教育制度の管理、教職員の適格審査・排除、国家神道に対する政府の支援等の廃止、修身・日本歴史・地理の授業停止を扱った。教育内容だけでなく、人員・教材・国家と宗教の関係も見直しの対象となった。GHQの民間情報教育局であるCIEは、その後の改革にも関わった。
1946年3月に来日した第一次米国教育使節団は、教育行政の地方分権、男女の教育機会、学校体系、教授方法などについて提言した。同年8月には日本側の教育刷新委員会が設置され、教育基本法や新しい学校制度の構想が検討された。
解説メモ|提言が制度となり、学校で実施されるまで
占領下で大きな権限を持っていたGHQの方針は、日本側の委員会や行政による検討を経て、具体的な法制度へと形づくられた。その実施には、学校や教員、地域が関わり、校舎・教員・教材の確保も必要になった。戦後改革は、占領政策、日本側の構想、地域での実施という各段階のつながりから捉えることで、誰がどのように改革を具体化したのかを理解できる。
出典:国立教育政策研究所「第一次米国教育使節団報告書」、文部科学省『学制百年史』。国立教育政策研究所
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1947年の教育法制:教育目的を憲法の原理へ結びつける
現在地|Ⅰ 戦後改革
日本国憲法は1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行された。教育基本法と学校教育法は、それに先立つ1947年3月31日に公布された。
制度
教育上の役割
日本国憲法
個人の尊重、教育を受ける権利、学問の自由等を保障する
教育基本法
人格の完成、平和的な国家・社会の形成者の育成など、教育の原則を示す
学校教育法
学校種、修業年限、設置・運営などを具体化する
1948年6月19日には、衆議院が教育勅語等の排除、参議院がその失効確認に関する決議を行った。
解説メモ|教育を支える規範がどう変わったか
戦後改革では、教育勅語を教育の規範とする体制から、憲法の権利や原則に基づいて教育目的と制度を定める体制へと転換した。教育を社会の形成に結びつけるという課題は引き継がれながら、目指す社会と、それを支える権利・原則が変わったのである。戦前と戦後を比較する際には、教育目標の文言と、その目標を正当化する根拠をあわせて説明する。
出典:文部科学省『学制百年史』、教育基本法関連資料。文部科学省
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6・3・3・4制:共通教育を九年間へ広げる
現在地|Ⅰ 戦後改革
新制小学校・中学校は1947年、新制高等学校は1948年、新制大学は1949年に発足した。義務教育は、小学校六年と中学校三年を合わせた九年間となった。
制度上の変化
戦前のように早い段階から学校種によって進路が分かれる仕組みを改め、共通の初等・前期中等教育を基礎に、上級学校へ進む体系が整えられた。男女の教育機会を広げることも、改革の重要な原則であった。
解説メモ|共通に学ぶ期間の拡大と、その先の進学条件
中学校まで共通の制度で学べることは、教育経路を早期に固定する仕組みを改め、基礎的な教育を広く保障する意味を持った。その先の高校や大学への進学には、費用、地域の学校配置、入学者選抜などの条件が関わる。単線型学校体系によって広がった機会を押さえたうえで、共通の制度のなかに残る学校間・家庭間の差を検討する必要がある。
出典:文部科学省「新教育制度の具現」。文部科学省
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高校三原則と教員養成:共通性と開放性を制度化する
現在地|Ⅰ 戦後改革
新制高等学校の三原則
原則
目指したこと
学区制
居住地域に基づく通学と、学校間の過度な序列化の緩和
男女共学制
性別によって教育機会を分けない
総合制
普通教育と職業教育を一つの学校で提供し、多様な生徒がともに学ぶ
各原則がどの程度実施されたか、学校がどのように構成されたかには、地域による違いがあった。
また、戦後の教員養成では、大学における教員養成と、一般大学も教職課程を通して養成に参加する開放制が基本原則となった。
解説メモ|教育を受ける経路と、教員になる経路を広げる
高校三原則は、子どもが異なる学校へ分かれる条件を見直し、共通に学ぶ機会を広げようとした。教員養成の開放制は、一般大学にも養成の機会を開き、教員の教育を幅広い学問や教養と結びつける方向を示した。対象は異なるが、両者には、特定の学校経路に閉じていた教育を開き、共通性と多様な参加を制度として支えようとする戦後改革の考え方が表れている。
出典:文部科学省教育制度史。教員養成の詳細は当該専門授業で扱う。文部科学省
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教育委員会制度:民主的統制と政治的中立性
現在地|Ⅰ 戦後改革
時期
制度の変更
1948年
教育委員会法により、公選を中心とする教育委員会制度が発足
1952年
原則として全市町村に教育委員会を設置
1956年
地方教育行政法により、公選制から、首長が議会の同意を得て任命する方式へ移行
2015年施行の改革
新教育長、総合教育会議などを通して、責任と調整の仕組みを見直す
出典:文部科学省教育行政史、早稲田大学の教育行政に関する公式出題意図。文部科学省
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教育委員会制度:民主的統制と政治的中立性(続き)
現在地|Ⅰ 戦後改革
1956年の改革では、政府が教育行政と一般行政の調和、政治的中立性、国・都道府県・市町村の連携を重視した。一方、公選制の廃止には住民自治が弱まるとの批判があり、国会でも対立が生じた。
教育委員会は、首長の一般行政部門とは別の執行機関として存続した。公選制が変わったことと、合議制の教育委員会自体が廃止されたことを混同しない。
解説メモ|継続性・専門性と、住民への責任をどう支えるか
教育委員会制度では、教育の継続性と専門的判断を保障し、短期的な党派間の対立による影響を抑えることが課題となる。同時に、住民の生活や権利に関わる行政として、意見を反映する仕組みと説明責任も求められる。制度の変遷は、教育行政の独立性、住民参加、首長との連携を、各時期にどのように組み合わせたかという視点から理解できる。
出典:文部科学省教育行政史、早稲田大学の教育行政に関する公式出題意図。文部科学省
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1947年学習指導要領と社会科:生活経験から学ぶ
現在地|Ⅰ 戦後改革
最初の学習指導要領は、1947年に「試案」として示された。教師が地域や子どもの実態を踏まえて教育課程を考えるための、手引きとしての性格を持っていた。
教科書も、国が内容を編纂する国定制度から、民間が編集し文部省が検定する制度へ移行し、1949年度から検定教科書の使用が始まった。教育内容の民主化は、教える内容だけでなく、誰が教材をつくり、授業を構成するかにも関わる改革だった。
新設された社会科では、生活や社会の問題を取り上げ、調査、話合い、資料の利用などを通して理解を深めることが重視された。
経験主義的な教育課程
子どもの生活経験や社会的な問題を学習のまとまりとし、その問題を考える過程で知識を関連づける教育課程である。
解説メモ|生活に根差した活動を、知識の理解へつなぐ
地域を調べる活動は、社会への関心や問題意識を育てる機会になる。その経験を知識の理解へつなげるには、何を学び、どの概念を用いて整理するかを明確にする必要がある。戦後初期の実践では、生活に根差した学びと系統的な知識の保障をどう結びつけるかが問われた。この問題は、その後の教育課程改訂でも繰り返し扱われる。
出典:国立教育政策研究所の教育史資料、原稿の戦後教育課程に関する整理。国立教育政策研究所近代以降の教育思想
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1958年以降:全国的な基準と教育内容の現代化
現在地|Ⅰ 戦後改革
改訂
主な方向
1958〜1960年
学習指導要領を告示し、教育課程の基準としての性格を明確化。系統的学習、基礎学力、科学技術教育を重視
1968〜1970年
学問や科学技術の進展を教育内容へ反映する「教育内容の現代化」を進める
1958年には、小・中学校に「道徳の時間」が設けられた。また、教育内容の現代化では、算数・数学の集合など、学問の進展を踏まえた内容が導入された。
解説メモ|経験・系統性・学習負担をつないで読む
戦後初期の経験主義的な教育に対し、教科の系統性や基礎学力の保障、地域による差が問題として指摘され、科学技術教育の充実も求められた。1958年以降の基準の明確化と系統性の重視は、こうした課題への応答である。その後、学問の進展を反映して内容を高めるほど、それを理解するための時間・教材・指導が問われる。次の改革では、内容を増やすことと、子どもが確実に学べることの関係が争点となる。
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」。文部科学省、学習指導要領解説・改訂の経過
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Ⅱ 教育拡大
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Ⅱ 教育拡大とメリトクラシー
現在地|Ⅱ 教育拡大
共通の学校体系ができても、進学先や学習経験まで同じになるとは限らない。進学の拡大に伴う選抜の仕組みを考える。
高度経済成長の過程で高校・大学への進学が広がり、学校での成績や取得した資格が、職業や社会的地位を得るうえで重要な意味を持つようになった。
メリトクラシー(Meritocracy)
能力や達成を基準に、機会や地位を配分する原理である。出身身分によって配分する仕組みとの違いに注目する。
学歴社会
修了した教育段階や学校歴が、就職や社会的評価に強く関わる社会を指す。
解説メモ|選抜の基準と、能力が育つ条件を区別する
試験による選抜は、出身身分によって進路が決まる仕組みを変える可能性を持つ。ただし、試験で評価される能力は、本人の努力と、家庭の学習資源、進学情報、学校での経験などが関わって形成される。戦後の教育拡大では、上昇の機会が広がる一方、教育を通して新たな差も生じた。選抜の入口が開かれたことと、競争に参加する条件が等しいことを区別して考える。
参考:原教材の戦後教育拡大・教育社会学の議論。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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トラッキング:同じ学校体系の中で進路が分かれる
現在地|Ⅱ 教育拡大
トラッキング(Tracking)
学校、学科、コースなどへの振り分けを通して、学ぶ内容やその後の進路機会が異なる経路に分かれていくことを捉える概念である。
日本では、共通の義務教育を終えた後の高校間の序列、普通科・専門学科等の違い、文理選択、大学への進学経路などが、進路の形成に関わる。
関係の流れ
学校・学科への配分
→学ぶ内容や周囲からの期待
→得られる進学情報と選択肢
→卒業後の進路。
解説メモ|学校での経験が、将来の見通しを形づくる
入学後に、同級生が考える進路や教師の助言、学校で得られる情報に触れることで、自分に可能だと思う選択肢が変わる場合がある。学校の違いは、学ぶ知識とともに、本人の希望や将来の見通しにも関わる。高校教育や進路指導、教育格差を研究する際には、進路希望が学校生活のなかでどのように形成されるかを検討できる。
本頁は、原稿の学校階層・選抜の議論を授業用に整理したものである。日本教育改革2(pp.29–33)
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学校の拡大とともに表れた、学校生活の課題
現在地|Ⅱ 教育拡大
1970〜1980年代には、学習についていけない子どもの問題や、校内暴力、いじめ、不登校などが社会的に取り上げられるようになった。
高校まで通うことが広く期待されるなかで、学校には学力、進路、生活指導、人間関係、健康など、多くの役割が集まった。多様な子どもが同じ制度で学ぶようになると、標準的な授業や学校の規範に参加しにくい経験も、教育の課題として表れる。
解説メモ|子どもの行動を、生活と学校の関係から捉える
子どもの行動には、本人の状態、友人関係、学校の評価や規律、家庭の生活条件などが関わる。個人の性格や受験競争を唯一の原因とする説明では、こうした関係の違いを捉えにくい。教育改革では、問題行動への対応とともに、子どもが何を経験し、どの場面で学習や所属の機会を得にくくなるのかが問われるようになった。
参考:原教材の戦後教育と生徒指導の整理。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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学校の拡大とともに表れた、学校生活の課題(続き)
現在地|Ⅱ 教育拡大
制度全体の見直しから、内容と学校生活の改善へ
1971年の中央教育審議会答申は、教育の量的拡大を踏まえ、学校体系、教育内容・方法、教育条件を総合的に見直す構想を示した。「第三の教育改革」と位置づけられたが、提案した学校体系がそのまま全国で実施されたわけではない。
その後の改革でも、教育内容の精選、個性の重視、学校生活の充実が課題となった。改革の提言と、実際に変更された制度・授業を分けて読む。
参考:原教材の戦後教育と生徒指導の整理。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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Ⅲ 学力観の変化
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1977〜1978年改訂:「ゆとり」の中で学習を充実させる
現在地|Ⅲ 学力観の変化
小・中学校は1977年、高等学校は1978年に学習指導要領が改訂された。全面実施は、小学校1980年、中学校1981年、高等学校1982年からである。
主な方向
教育内容を中核的な事項に絞り、学習負担を適正化することで、基礎的な内容を確実に学べるようにし、ゆとりのある充実した学校生活を目指した。
解説メモ|精選によって生まれる時間を、理解の充実に用いる
内容の精選には、理解や活動に必要な時間を確保するというねらいがあった。その時間を学習の充実につなげるには、残した内容を関連づけ、つまずきに応じた支援を行い、学校が使い方を工夫する必要がある。「ゆとり」を説明する際には、削減された内容や時数を押さえ、それによってどのような教育を実現しようとしたのかを述べる。
「ゆとり教育」は、複数時期の改革をまとめて呼ぶ場合がある。1977年改訂と2002年全面実施の改革は区別する。
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」。文部科学省
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臨時教育審議会:画一性と社会変化に応える
現在地|Ⅲ 学力観の変化
臨時教育審議会は、1984〜1987年に内閣総理大臣の諮問機関として設置され、教育改革を検討した。
基本的な考え方
内容
個性重視
個人の尊厳や個性、多様性を重視する
生涯学習体系への移行
学校在籍期間に偏った教育観を、生涯にわたる学習へ広げる
変化への対応
国際化、情報化などの社会変化に対応する
その後、総合学科や単位制高校、大学制度の弾力化など、選択と多様化を広げる改革が具体化した。総合学科は1994年度から導入された。
解説メモ|選択肢を利用できる条件も考える
教育の選択肢が増えると、本人の関心や生活状況に合う学びを選びやすくなる。その選択には、情報や費用、通学条件が関わるため、制度上選べる範囲と、実際に利用できる範囲には違いが生じ得る。個性重視の改革を考える際には、多様な選択を支える相談や経済的支援と、すべての生徒に共通して保障する教育との関係を検討する。
出典:文部科学省の臨教審関連整理、総合学科制度。文部科学省
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1989年改訂と「新しい学力観」
現在地|Ⅲ 学力観の変化
1989年改訂では、社会の変化に自ら対応する力が重視され、小学校低学年に生活科が設けられた。生活科は1992年度から全面実施された。
「新しい学力観」の下では、知識・理解とともに、関心・意欲・態度、思考・判断、表現などを捉えることが重視された。1991年の指導要録改訂も、この方向に沿うものである。
解説メモ|学習への関わりを、何によって捉えるか
同じ知識を答えられる生徒でも、疑問を持ち、資料を探し、考えを説明する過程には違いがある。新しい学力観は、こうした学びへの関わりにも目を向けた。ただし、意欲を挙手回数や従順さだけで評価すると、主体的に学ぶことを重視しながら、特定の振る舞いを求めることになる。学習のどの過程を、何を手がかりに評価するかが課題となる。
研究との接点
主体性の評価、生活科における学び、教師の支援と指導の関係。
出典:文部科学省教育課程史、1993年の「新しい学力観と個性化・評価」に関する研究。文部科学省
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1996年「生きる力」と総合的な学習の時間
現在地|Ⅲ 学力観の変化
1996年7月19日の中央教育審議会第一次答申は、変化する社会で必要となる「生きる力」を提唱した。
生きる力の内容
自ら課題を見つけ、学び、考え、判断して問題を解決する資質・能力と、自分を律し、他者と協調する豊かな人間性、これらを支える健康や体力を含む。
1998年の小・中学校、1999年の高等学校の改訂では、総合的な学習の時間が新設された。小・中学校は2002年度、高校は2003年度入学生から全面実施された。
解説メモ|現実の問題を通して、教科の知識を関連づける
国際理解、環境、福祉などの課題を考えるには、複数の教科で学ぶ知識が必要になる。総合的な学習では、問題を設定し、調べ、考え、表現する過程で、それらを関連づける。活動中に必要となった知識を教科で学び、その理解を問題の検討に用いることで、体験と教科学習を往復させられる。どの知識が、課題のどの部分を理解するために必要かを明確にすることが要点となる。
出典:文部科学省「新学習指導要領についての基本的な考え方」。文部科学省
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学校週5日制:学校・家庭・地域の役割を変える
現在地|Ⅲ 学力観の変化
学校週5日制は、1992年9月から月1回、1995年4月から月2回へと段階的に進められ、2002年4月に完全実施された。
政策上の考え方
子どもが学校で過ごす時間の一部を家庭や地域での活動へ広げ、自然、文化、社会参加などの経験を通して、生きる力を育てようとした。
解説メモ|学校外の経験を支える条件は、家庭によって異なる
休日に利用できる場所や活動の費用、移動手段、大人が関われる時間には、家庭による違いがある。学校で共通に過ごす時間が減ると、その違いが子どもの経験に表れる場合もある。週5日制を考察する際には、授業時間の変化とともに、学校外で誰がどのような機会を用意し、子どもが利用できる条件を整えたのかを捉える。
本講での位置
教育の個性化を、学校外の学習条件を社会的に支える問題と結びつけて考える。
参考:原稿の学校週5日制、文部科学省の「生きる力」に関する説明。日本教育改革2(p.45)文部科学省
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2002〜2003年:「確かな学力」を具体化する
現在地|Ⅲ 学力観の変化
2002年1月、文部科学省は「確かな学力の向上のための2002アピール『学びのすすめ』」を公表した。新学習指導要領の全面実施に先立ち、基礎・基本の定着、個に応じた指導、発展的な学習などの充実を求めた。
2003年の一部改正では、学習指導要領に示されていない内容も指導できることが明確にされ、補充・発展学習等が例示された。
解説メモ|基礎の定着と、自ら学ぶ力をどう支えるか
「確かな学力」には、知識の習得とともに、学ぶ意欲や思考・判断・表現が含まれる。2002年の取組は、総合的な学習を含む新学習指導要領の実施に向け、基礎的な理解を確実にし、個々の状況に応じて学習を深める条件を整えようとするものであった。以前の改革との関係は、継続された目的と、追加・調整された指導の方法を区別して捉える。
2002年の取組は、2004年に公表されたPISA2003の結果より前に始まっている。
出典:文部科学省「確かな学力」政策資料。文部科学省
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PISAショック:何を学力として問うのか
現在地|Ⅲ 学力観の変化
PISAは、15歳の生徒を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーなどを調べるOECDの国際調査である。
2004年に公表されたPISA2003では、日本の読解力の結果が、国内の学力をめぐる議論に大きな影響を与えた。
日本の読解力平均得点――比較のための抜粋
調査年
得点
2000年
522
2003年
498
2018年
504
2022年
516
解説メモ|国際調査が、学力観と改革の議論に入る
PISAは、知識を用いて資料や問題を理解する力に注目し、何を学力として育て、評価するかを考える契機となった。得点の変化には複数の条件が関わるため、一つの教育政策の効果として説明するには慎重な検討が必要である。教育史では、結果そのものとともに、国際的な指標が国内の学力観や改革の議論にどう用いられたかを捉える。
出典:OECD, PISA 2022 Results, Volume I、長期推移。OECD
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2006年教育基本法改正:継続した目的と新しい規定
現在地|Ⅲ 学力観の変化
2006年12月22日、全部改正された教育基本法が公布・施行された。人格の完成と、平和で民主的な国家・社会の形成者の育成という基本的な目的は引き継がれた。
主な変更
教育目標を具体化し、公共の精神、伝統と文化、環境などを規定した。また、生涯学習、大学、私立学校、家庭教育、学校・家庭・地域の連携、教育振興基本計画などに関する条項が置かれた。
教育行政の規定
旧法第10条の「国民全体に対し直接に責任を負って」という表現に対し、現行第16条では、法律に基づく教育の実施と、国・地方公共団体の役割が規定された。
解説メモ|教育目標の具体化と、行政の責任を考える
教育目標と行政の責任を法文に示すことは、政策の内容や条件整備を考える基礎になる。一方、どの価値や行動を公的な教育目標に含めるかは、個人の自由や教育の自主性にも関わる。条文が何を定めたか、その内容がどの政策として具体化されたか、学習者にどのような働きかけが行われるかを区別すると、法改正の意味を具体的に検討できる。
出典:教育基本法、文部科学省関連資料。文部科学省
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2007年全国学力・学習状況調査:結果を何に使うか
現在地|Ⅲ 学力観の変化
2007年度から、小学校第6学年と中学校第3学年を対象とする全国学力・学習状況調査が実施された。
教科に関する調査と、生活・学習状況や学校の取組等を把握する質問調査を組み合わせ、その結果を教育施策や指導の改善に用いることを目的としている。
活用の方向
教育上の意味
つまずきの把握
教える内容や指導方法を改善する
学習条件との関係
家庭・学校の環境や支援を検討する
政策への反映
教員配置や学習支援等を考える
解説メモ|調査結果から、必要な学習機会を考える
結果を支援や改善に用いるには、どの内容につまずきがあり、学習の背景にどのような条件があるかを確かめる必要がある。学校平均の点数による比較を中心にすると、子どもの背景や点数に表れにくい学びは捉えにくくなる。同じ調査でも、結果の使い方によって、学校が重点を置く活動や子どもの経験への影響は異なる。
参考:原稿の全国学力調査・教育評価に関する整理。文部科学省「全国的な学力調査」
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2008〜2009年改訂:習得・活用・探究をつなぐ
現在地|Ⅲ 学力観の変化
2008年に小・中学校、2009年に高等学校の学習指導要領が改訂された。授業時数や指導内容を充実させながら、「生きる力」の育成を継続した。
学習の側面
内容
習得
基礎的な知識・技能を理解し、身につける
活用
習得した知識・技能を使って考え、説明する
探究
問いを設定し、知識や資料を関連づけて追究する
言語活動の充実などを通して、思考力・判断力・表現力を育てることも重視された。
解説メモ|三つの学習を、授業のなかで往復させる
知識を活用すると、その意味への理解が深まり、探究を進めるなかで、新たな知識を習得する必要も生じる。習得・活用・探究は、このように互いを支えながら進む。授業では、問題を理解するために必要な基礎概念と、その概念を使って考える場面を結びつけることで、知識の定着と学習者による追究をあわせて支えられる。
出典:文部科学省教育課程改訂資料、2008年の学校実践資料。文部科学省
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Ⅳ 現在の改革と学習の保障
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2017〜2018年改訂:資質・能力の三つの柱
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
知識、経験、主体性をめぐる改革を踏まえ、現在の教育課程で何を育てるのかを確かめる。その目標を授業と評価へどうつなぐかまで検討する。
小・中学校は2017年、高校は2018年に学習指導要領が改訂された。全面実施は、小学校2020年度、中学校2021年度、高校2022年度入学生からである。
三つの柱
学習として問うこと
知識及び技能
何を理解し、何ができるか
思考力・判断力・表現力等
理解していることを、どう用いるか
学びに向かう力・人間性等
学びを生活や社会へどうつなぐか
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」。文部科学省
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2017〜2018年改訂:資質・能力の三つの柱(続き)
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
「主体的・対話的で深い学び」は、これらの資質・能力を育てるための授業改善の視点として示された。
解説メモ|育てる力と、授業改善の視点を対応させる
主体的な学び
見通しを持って取り組み、学習を振り返って次につなげる。
対話的な学び
仲間、教師、地域の人や先人の考えとの関わりを通して、自分の考えを広げ深める。
深い学び
各教科等の「見方・考え方」を働かせ、知識を関連づけて理解し、問題の発見・解決や新たな表現に用いる。
三つの柱は育成する資質・能力、以上はそれを育てる授業改善の視点である。話合い等の活動形式だけで判断せず、その過程で理解がどう変わったかを確かめる。
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」。文部科学省
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社会に開かれた教育課程:目標と資源を共有する
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
「社会に開かれた教育課程」は、学校が育てようとする資質・能力や教育目標を社会と共有し、連携・協働を通して実現する考え方である。
カリキュラム・マネジメントの三つの側面
教科等を横断して教育内容を組織する。
実施状況を評価し、改善する。
校内外の人的・物的資源を教育活動に結びつける。
解説メモ|地域との連携を、教育目標に沿って組み立てる
地域の企業や住民を授業に招く際には、その関わりを通して子どもが何を学ぶのかを明確にする。地域産業を扱うなら、用いる教科の概念、考える問い、成果を振り返る方法を関連づけて準備する必要がある。こうした検討を共有することで、学校と地域の連携は、子どもが学ぶ内容と、それを支える条件をともに考える取組となる。
関連:教育課程・学校経営・社会教育の授業。
出典:文部科学省「学習指導要領の変遷」及び教育課程関連資料。文部科学省
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教育課程を、計画・授業・学習の三層で読む
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
教育課程は、計画に示された目標、学校での実施、学習者の到達を分けて捉える。
層
問うこと
例:地域の水質を扱う単元
意図された教育課程
学習指導要領・学校計画が何を目標とするか
水質や地域環境を調べ、根拠を用いて説明する
実施された教育課程
授業で教師・学習者が実際に何をしたか
観察・資料読解・話合いをどの順に行ったか
達成された教育課程
学習者が何を理解し、何をできるようになったか
調査結果を根拠に環境上の課題を説明できたか
出典:TIMSS & PIRLS International Study Center, TIMSS 2019 Assessment Frameworks, “Policy Relevant Data”(intended / implemented / attained curriculum)。TIMSS
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教育課程を、計画・授業・学習の三層で読む(続き)
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
三層のずれは、目標の不明確さ、授業時間・教材・教員体制、学習者の既有知識や支援条件などから生じ得る。導論「隠れたカリキュラム」で扱った、公式な計画に明示されない規範が学校生活から学ばれる過程も、計画だけを見ていては捉えにくい。この三層はTIMSSの教育課程モデルによる整理であり、上の水質単元は本講座作成の説明例である。
短答:計画上「対話的な学び」を掲げても、実施・達成を別に確かめる必要があるのはなぜか。
出典:TIMSS & PIRLS International Study Center, TIMSS 2019 Assessment Frameworks, “Policy Relevant Data”(intended / implemented / attained curriculum)。TIMSS
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教科と科目、二つの教育課程観
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
教科は学校教育課程を編成する広い領域(例:高等学校の「国語」)、科目は教科の中に置かれる具体的な学習区分(例:「現代の国語」「言語文化」)である。中学校では教科ごとに教育課程を編成する。入試で問われる「教科」と「科目」は、領域名とその内訳を区別して答える。
教育課程観
内容の組み立て方
例
教科カリキュラム
教科の知識・技能を系統立てて配列する
文学的文章の読解方法を、単元ごとに学ぶ
経験カリキュラム
学習者の経験・関心や現実の問題を出発点に、必要な知識を組織する
地域の案内をつくる課題から、読解・取材・表現を関連づける
出典:文部科学省「高等学校学習指導要領解説」(平成30年告示・国語編)及び教育課程資料。文部科学省
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教科と科目、二つの教育課程観(続き)
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
経験を重視する授業にも教科知識は必要であり、系統的な教科学習も学習者の経験と結びつくことで理解が深まる。課題に必要な知識を選び、その知識を活動のなかでどう使い、身につけるかが授業設計の要点となる。
比較チェック:上の「地域案内づくり」を、教科カリキュラムと経験カリキュラムの各々から説明する。
出典:文部科学省「高等学校学習指導要領解説」(平成30年告示・国語編)及び教育課程資料。文部科学省
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評価を使い分ける:学習を進める評価と成果の評価
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
用語
目的と時期
例
形成的評価
学習の途中でつまずき・進歩を捉え、次の学習や教師の指導を改善する
途中の草稿に助言し、根拠の追加や構成の修正を促す
総括的評価
単元・学期等の終わりに、学習の成果をまとめて判断・記録する
完成レポートや単元末課題を評価する
目標準拠評価
あらかじめ示した目標に照らして到達状況をみる
目標「根拠を示して説明する」に照らして答案を評価する
集団準拠評価
学級・学年等の集団内での相対的位置をみる
得点順位や集団内の位置を比較する
出典:文部科学省「児童生徒の学習評価の在り方について」(2010年報告)及び「児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(2019年3月29日通知)。報告/通知
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評価を使い分ける: 学習を進める評価と成果の評価(続き)
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
上二つは評価の機能、下二つは判断の基準の違いであり、四つを一列の対概念にしない。形成的か総括的かは実施時期だけで決まらず、得られた情報を何に使うかを確かめる。日本の各教科の観点別学習状況の評価・評定は、目標に準拠して行う。これは児童生徒の学習評価の話であり、学校の教育活動・運営を対象とする「学校評価」と区別する。
短答:途中の草稿への助言は、どの評価に当たり、何を改善するために行うか。
出典:文部科学省「児童生徒の学習評価の在り方について」(2010年報告)及び「児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(2019年3月29日通知)。報告/通知
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GIGAスクール構想:機器整備から学習条件へ
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
2019年度補正予算でGIGAスクール構想が始まり、義務教育段階の一人一台端末と高速大容量の通信環境の整備が進められた。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、整備は前倒しされた。
教育上の可能性
資料を利用する機会を広げ、表現方法や学習の進め方を理解の状況に応じて選び、離れた相手や学校外の人々とともに学べるようにする。
実施に必要な条件
通信環境と機器の維持、教材、教員の専門性、相談・支援の体制、家庭での利用条件を整える。
解説メモ|端末によって、どのような学習が可能になるか
端末の読み上げ機能や表現方法の選択は、学習への参加を広げる手がかりになる。その活用には、読み書きの状態、家庭で使える場所、支援者の有無も関わるため、学習者によって必要な支援は異なる。GIGAスクール構想を考察する際には、配備状況とともに、どの障壁が減り、どの場面で自己管理や家庭の支援に頼ることになったかを確かめる。
参考:原稿及び原教材のGIGAスクール構想に関する整理。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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2021年答申:個別最適な学びと協働的な学び
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
子どもの背景や教育的ニーズの多様化、人口減少、教師の負担増加によって、一律の方法を前提にした指導・学校運営の見直しが求められた。コロナ禍の臨時休業は、学校が学習機会・学力、全人的な発達、安全・安心な居場所を支える役割も浮き彫りにした。
2021年1月26日の中央教育審議会答申は、こうした役割を継承しながら「令和の日本型学校教育」を構築することを掲げた。「個別最適な学び」は、次表の「指導の個別化」と「学習の個性化」を学習者の視点から整理した概念であり、協働的な学びと一体的に充実させる。
内容
調整・保障するもの
指導の個別化
学習状況に応じた教材・方法・時間等
学習の個性化
関心や経験に応じた課題・活動
協働的な学び
仲間、教師、地域の人々との関わりを通した理解
出典:中央教育審議会「令和の日本型学校教育」答申。文部科学省
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2021年答申:個別最適な学びと協働的な学び(続き)
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
各自が得た理解を共有し、他者の考えを手がかりに深めることで、個別の学習と協働的な学習を結びつけることが求められる。
解説メモ|一人ひとりへの支援を、学校の組織で支える
学習状況に応じた課題や支援を用意するには、学級・教科担当者が情報を共有し、支援スタッフと協力しながら教材や時間を調整する必要がある。一人の教師がすべてを抱えると、負担が増え、必要な支援が届きにくくなる。個別最適な学びを実現するためには、学習者による調整を支えることと、学校全体の指導・支援体制を整えることが結びつく。
出典:中央教育審議会「令和の日本型学校教育」答申。文部科学省
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次期学習指導要領:深さ・多様性・実現可能性
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
2025年9月25日の教育課程部会では、次期学習指導要領に向けて、学びを深めること、多様な子どもを包摂すること、教育課程を実施できる条件を整えることなどが議論された。
2026年9月25日の教育課程企画特別部会(第18回)では、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」が配付資料として示された。これは審議過程の資料であり、告示済みの新学習指導要領ではない。
検討の視点
教育史との関係
深い理解
個別の知識を関連づけ、概念を理解する学習をどう組織するか
多様性
共通の教育と、一人ひとりの必要をどう結びつけるか
実現可能性
時間・人員・教材等の条件をどう整えるか
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次期学習指導要領:深さ・多様性・実現可能性(続き)
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
解説メモ|育てたい力と、実施に必要な条件を対応させる
戦後の改革では、経験、個性、深い学びなどが繰り返し重視されてきた。その実現には、重点を置く内容を明確にし、教師が授業を準備・実施する時間や資源を確保することが関わる。新しい改革を読む際にも、学習者に何を育てようとしているかと、それを学校で実施するために何を整えるかを対応させて考える。
本頁は審議過程の紹介であり、新学習指導要領の告示・全面実施を意味しない。
出典:文部科学省「教育課程企画特別部会(第18回)配付資料」(2026年9月25日)。文部科学省
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自分の研究関心を、改革の歴史と結びつける
現在地|Ⅳ 現在の改革と学習の保障
研究関心
本講から深められる問い
探究学習
総合的な学習と教科知識の関係は、学校でどのように組織されるか
教育格差
選択肢の拡大が、家庭や地域による条件の違いとどう結びつくか
子どもの主体性
主体性を育てる目標と、評価・規律の仕組みはどう関係するか
教員・学校経営
改革に必要な時間・専門性・協働をどう確保するか
地域の学び
学校外の経験を、家庭と社会がどのように支えるか
解説メモ|現在の困難を、改革の積み重ねから捉える
探究学習が進みにくい場合、教師の指導方法に加え、教科との関係、入試や評価、校内の時間配分を検討できる。学校選択の拡大についても、生徒や家庭が利用できる情報・費用の条件が問いになる。現在の問題がどの改革を経て生じてきたかをたどることで、本人や教師の努力に関わる部分と、制度や組織として検討する部分を具体化できる。
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演習・改革比較・論述
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複数選択問題1:戦後改革をどう説明するか
現在地|演習・改革比較・論述
本講座作成・説明文の検討
学生は、戦後改革について次のようにまとめた。
「アメリカの制度を導入して全員が同じ学校へ進むようになったため、教育格差は解消された。その後、教育委員会ができ、教育は政治と完全に無関係になった。」
修正として適切なものを二つ選びなさい。
A.学校体系が共通になった以上、高校・大学への進学条件も同じになったと補足する。
B.GHQの政策、日本側の構想、地域での実施を関連づけ、制度の共通化と実際の機会均等を区別する。
C.教育委員会の独立性は、住民の意見を教育へ反映させないための仕組みだと説明する。
D.教育行政の制度では、政治的中立性と民主的な意思形成の両立が課題となると説明する。
E.戦前からの校舎や教員が残ったことを理由に、戦後改革による制度的な変化はなかったとする。
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複数選択問題2:選べる学校が増えたとき
現在地|演習・改革比較・論述
本講座作成・仮想事例
ある地域では、高校の学科や選択科目が多様化した。保護者は「本人に合う学校を選べる」と受け止めているが、説明会への参加、通学費、進学情報を得る機会には家庭差がある。中学校で勧められる学校は成績によって異なり、その後の進学先にも違いが見られる。
本講の概念から適切に述べられることをすべて選びなさい。
A.教育の多様化によって広がる選択肢と、その選択肢を利用するための条件をあわせて検討する必要がある。
B.学校の選択肢が多いことと、すべての生徒に同じ機会があることは同じである。
C.学校・学科への振り分けが学習内容や将来への期待に関わる過程を、トラッキングの視点から考えられる。
D.進路希望は入学前に完成するため、入学後の経験は分析対象に含めなくてよい。
E.進路を選ぶ力の育成と、情報・費用・交通等の条件整備を組み合わせる必要がある。
【教育学 KIKI 内部资料 版权保护】

複数選択問題3:「ゆとり教育」を歴史的に捉える
現在地|演習・改革比較・論述
本講座作成
「ゆとり教育で学力が下がったので、2004年からすべて元へ戻した」という説明について、適切な判断をすべて選びなさい。
A.1977年改訂、1989年改訂、1998〜1999年改訂では、背景や具体的な内容が異なる。
B.2002年「学びのすすめ」は、PISA2003の結果公表後に始まった。
C.内容の精選、学力の保障、主体的な学習は、それぞれの改革のなかで関連づけて考える必要がある。
D.2008〜2009年改訂も「生きる力」の育成を継続し、知識・技能と思考・判断・表現の関係を重視した。
E.総合的な学習の時間の新設によって、教科で基礎知識を学ぶ目的は廃止された。
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複数選択問題4:個別化と共通保障をどう組み合わせるか
現在地|演習・改革比較・論述
本講座作成・仮想材料
学校は個別最適な学びを進めるため、生徒が端末で好きな課題を選ぶ時間を増やした。得意な生徒は発展的な課題へ進むが、基礎的な内容に困難を抱える生徒は、簡単な問題を繰り返している。教員は「本人が選んでいるので主体的である」と説明した。
改善の方向として適切なものをすべて選びなさい。
A.本人が選んだ以上、学習内容の広がりは学校の責任から外れる。
B.共通に身につけたい内容を明確にし、その理解に必要な方法や支援を調整する。
C.生徒が課題の意味や次の学習を理解できるよう、説明や相談の機会を設ける。
D.全員を同じ端末教材に戻せば、学習条件の差は必ず解消する。
E.個別に得た理解を他者と共有し、異なる考えに接する学習を組み込む。
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複数選択問題5:研究関心を改革の論点へつなぐ
現在地|演習・改革比較・論述
本講座作成
研究関心と教育史上の問題が適切に結びついているものをすべて選びなさい。
A.総合的な学習を研究し、生活上の問題と教科知識を学校がどう関連づけるかを問う。
B.学校週5日制を研究し、休日の増加によって全家庭の学習経験が同じになったと仮定する。
C.学習評価を研究し、意欲を挙手回数と同義に定義する。
D.教育の個性化を研究し、選択肢が家庭の条件や学校の情報提供とどう関わるかを問う。
E.教育改革の実施を研究し、教師が協働する時間や教材整備が、新しい学習の構想をどう支えるかを問う。
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改革の継続と変更を説明する
現在地|演習・改革比較・論述
解説メモ|教育目的と、その実現方法を区別する
改革の比較では、内容や時数の増減と、それによって実現しようとした目的を対応させる。何が継続され、どの内容・時間・方法が変更されたかを示すことで、改革を一つの標語にまとめずに説明できる。
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主体性を支える条件を捉える
現在地|演習・改革比較・論述
教育研究では、本人の意欲や能力が、どのような学校・社会の条件の下で育ち、発揮されるかを問うことができる。
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小論文A:教育学共通基礎・現代課題型
現在地|演習・改革比較・論述
本講座作成/60分/1,000〜1,200字
すべての子どもに共通する教育を保障することと、一人ひとりの多様な状況に応じることは、どのように関係づけられるべきか。戦後日本の教育改革に言及し、現代の具体的な教育課題を取り上げて論じなさい。
選べる論点
学習の個別化、教育格差、不登校、外国につながる子ども、学校選択、地域差、デジタル化など。
この問題で求めること
自分の論点に関わる改革を選び、そこで共通に保障しようとした教育と、現在の個別の必要への対応を関連づけて論じる。
特定大学の過去問の転載ではない。
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現在地|演習・改革比較・論述
本講座の評価基準
設問への応答25/歴史・概念の正確性25/現代課題との接続25/具体性15/日本語10。
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過去問B:戦後改革の立案・理念・制度
早稲田大学大学院教育学研究科 2018年度入学試験
学校教育専攻/専門科目 設問Ⅰ(教育学)問題2(7)からの抜粋
元の試験の共通指示
以下の7題中、1課題を選び、論述しなさい。
原題
(7)戦後日本の教育改革について、戦前との対比の観点を踏まえながら、立案過程、基本理念、制度概要を中心に論述しなさい。
出典:所蔵過去問『早大过去问2018.pdf』PDF pp.1–2。過去問原文アーカイブ
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確認すること
原題の三つの指定軸と戦前との対比にすべて答えているか。後年の改革を扱う場合も、戦後改革の説明が中心から外れないようにする。
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