
高等教育
大学の役割・学びの質・教育機会を
どう結びつけるか
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本講の流れ:多くの人が学ぶ時代の大学
高等教育が多くの人の進路になるにつれて、大学には、研究者や専門職の養成とともに、多様な学生の学習、社会への移行、生涯にわたる学び直しを支えることが求められるようになった。
三つの問い
大学は何のためにあるか。
多様な学生に、どのような学びを保障するか。
誰が、どのような条件で高等教育に参加できるか。
学ぶ段階|Ⅰ 理念と変容
中心内容|日本の大学制度の成立と拡大、大学の理念、学問の自由、トロウの段階論
↓ 学ぶ段階|Ⅱ 学びの質
中心内容|大学改革、質保証、三つの方針、教学マネジメント
↓ 学ぶ段階|Ⅲ 機会と社会
中心内容|修学支援、国際化、学び直し、地域の教育機会
本講では、大学数や就職率などの指標を、教育研究の目的や、学生が実際に学べる条件と関連づけて考える。
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Ⅰ 理念と変容:日本の大学はどう広がったか
国家建設と高等教育
1886年の帝国大学令は、国家に必要な学術と人材の育成を重視した。1918年の大学令は、公立・私立大学や単科大学も制度上認めた。
出典:文部科学省『学制百年史』及び「我が国高等教育のこれまでの歩み」。文部科学省「我が国高等教育のこれまでの歩み」/「帝国大学の発足と拡充」/「大学令の制定と大学の拡張」/「新制大学の制度と基準」/「新制大学の発足」
戦後の制度改革
1947年の学校教育法を基に、旧制の大学・高校・専門学校・師範学校等を再編し、1949年に新制大学が本格的に発足した。一般教育と専門教育を結びつけ、大学への進学経路を広げた。
高度経済成長と進学拡大
高校進学の拡大、専門人材への需要、家計の教育期待などが重なり、私立大学を大きな担い手として高等教育が拡大した。
次の問い
学ぶ人が増えると、大学の目的・学生像・教育内容はどう変わるか。これを捉える理論がトロウの段階論である。
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Ⅰ 高等教育の範囲と、日本の主な機関
現在地|Ⅰ 理念と変容
機関・課程
主な特徴
大学・大学院
学術に基づく教育研究を行い、学士、修士、博士、専門職学位等を授与する
短期大学
二年または三年を基本とし、教養・専門教育を行う
高等専門学校
中学校卒業後の五年一貫教育を基本に、専門的な教育を行う
専門学校
専修学校の専門課程として、職業や実際生活に必要な能力等を育てる
専門職大学・専門職短期大学
2019年度から設けられ、実践的な職業教育と学術的な基盤を結びつける
解説メモ|入学資格、教育段階、修了時の資格を確かめる
高等専門学校は中学校卒業後に入学するため、その全学年を「高校卒業後の教育」として扱うことはできない。また、専門学校と大学では、修了時に得られる資格の制度が異なる。機関を比較する際には、入学資格、教育目的、修業年限、修了資格、上級課程への接続を対応させる。この制度的な範囲の違いによって、大学進学率と高等教育機関全体への進学率も異なる。
出典:文部科学省学校制度・学校基本統計。文部科学省
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大学の二つの理念:教養の形成と研究への参加
現在地|Ⅰ 理念と変容
理念
中心となる考え方
ニューマン(John Henry Newman)
リベラル・エデュケーションを通して、知識を関連づけ、幅広く判断する知性を育てる
フンボルト的大学理念
自由な学問探究と教育を結びつけ、研究に関わる過程を人間形成につなぐ
ニューマンの『大学の理念』は、教育の価値を目先の職業的な効用で判断する見方を問い直した。フンボルト的理念では、知識を学ぶことと、その知識を生み出す探究の過程に参加することの結びつきが重視される。
解説メモ|専門を広く捉えることと、知識を問い直すこと
教養教育は、専門を他の領域や社会の問題と関係づけ、広い見通しから判断する力を支える。研究に基づく教育では、根拠を検討し、問いを立て、説明を更新する経験が、研究職以外の場でも必要な判断につながる。二つの理念は、大学を二種類に分類する基準とは区別し、それぞれがどのような知性や人間形成を目指すかを考えるために用いる。
出典:Newman原典、Tenorthによるフンボルト的大学理念の歴史研究。Project Gutenberg
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学問の自由・大学の自治と社会的責任
現在地|Ⅰ 理念と変容
学問の自由
研究の主題や方法を選び、成果を発表し、学問的に議論する自由に関わる。日本国憲法第23条に規定されている。
大学の自治
学問の自由を制度的に支えるため、教育研究、人事、組織運営等について、大学が自主的に判断することを認める原理である。
社会的責任
大学は、学生の学習、研究の公正、成果の社会への還元、公的資金の使用についての説明などに責任を負う。
解説メモ|自主的な学問と、学生・社会への説明を結びつける
基礎研究や批判的な検討には、外部からの短期的な要求に左右されず、学問的な判断に基づいて取り組める条件が必要になる。同時に、大学がどのような教育を提供し、権利侵害にどう対応し、資金を何に用いるかは、学生や社会への説明が求められる。学問の自由と大学の自治を捉える際には、それらを保障する仕組みと、責任を果たす仕組みを関連づけて考える。
出典:日本国憲法第23条、教育基本法第7条。文部科学省
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トロウ:量的拡大は大学の性格を変える
現在地|Ⅰ 理念と変容
マーチン・トロウ(Martin Trow)
高等教育の拡大を、参加者数の増加に伴って、教育目的、組織、学生像が変わる過程として捉えた。
類型
参加率の目安
高等教育への社会的な見方
エリート型
おおむね15%まで
一部の人の特権
マス型
おおむね15〜50%
より多くの人に開かれる権利
ユニバーサル・アクセス型
おおむね50%超
広範な人々に期待される進路・学習機会
解説メモ|参加者の増加が、教育の組織を変える
進学する学生の経験や学習目的、準備状態が多様になると、大学はそれに応じて教育課程、学習支援、評価、財政を組み直す必要がある。段階論は、参加率の変化を手がかりに、こうした高等教育の性格の変容を捉える。数値は類型を理解する目安であり、大学の教育の質を順位づけたり、全員が無選抜で入学することを示したりするものとは区別する。
出典:Trow(2005), Reflections on the Transition from Elite to Mass to Universal Access。eScholarship
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参加の拡大と、高等教育内部の分化
現在地|Ⅰ 理念と変容
高等教育を受ける人が増える過程では、進学できる機会が広がるとともに、機関・分野ごとの教育や進路の違いも重要になる。
二つの区別
参加の拡大:高等教育を受ける人が増えること。
内部の分化:大学・学部・地域・課程によって、資源、社会的評価、卒業後の進路が異なること。
解説メモ|機会の拡大と、選抜・資格の働きをあわせて見る
大学で学ぶ機会が広がると、専門知識や学位を得て進路を開く人も増える。一方、どの大学・専攻に進むか、学費を負担して卒業まで学べるかによって、得られる経験や資格、仕事への接続は異なる。大学は教育・研究・社会貢献を担うとともに、学位や学校歴を通じた社会的な選抜・配分にも関わる。進学者数の増加が、どの集団の機会をどこまで広げたかを問う。
トロウの類型では、同じ社会や機関のなかに、異なる形態が併存することも考えられている。
出典:Trow(2005)。具体例は本講座作成。eScholarship
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日本の大学改革:裁量の拡大と質保証
現在地|Ⅰ 理念と変容
改革|1991年大学設置基準の大綱化
主な内容|一般教育・専門教育等の細かな区分を弾力化し、大学の責任で教育課程を編成する方向を強める
↓ 改革|2004年国立大学法人化
主な内容|国立大学の運営を法人単位へ移し、自主的運営と目標・評価等の仕組みを導入する
↓ 改革|2004年認証評価制度
主な内容|設置後の教育研究や運営について、定期的に第三者評価を受ける
解説メモ|大学が教育課程を編成し、その成果を説明する
全国共通の細かな科目区分が弾力化されると、大学は自らの理念に応じて教育課程を編成し、その構成によって学生が何を学べるかを説明することになる。国立大学法人化についても、自主的な運営、財政、目標・評価、教育研究上の判断の関係を確かめる必要がある。法人化は、国立大学を株式会社や私立大学へ変更したこととは区別して理解する。
出典:文部科学省の大学教育課程・認証評価制度の説明。文部科学省
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日本の高等教育を数字から捉える
現在地|Ⅰ 理念と変容
2025年度学校基本統計・確定値
指標
数値
大学学部への進学率
58.6%
大学学部・短期大学本科への進学率
61.4%
高等教育機関全体への進学率
85.4%
いずれも過年度卒業者を含む指標であり、分母は3年前の中学校等の卒業者数である。高等教育機関全体には、専門学校や高専第4学年への進学等も含まれる。
大学学部学生約264.6万人のうち、私立大学の学生は約206.0万人で、約78%を占める。
解説メモ|集計する機関の範囲と、費用負担の仕組みを読む
大学学部と、職業教育を含む高等教育全体では、集計する機関の範囲が異なるため、進学率から読み取れる機会の広がりも変わる。また、私立大学が多くの学生を受け入れている日本では、大学への支援と学生への修学支援の組合せが課題になる。数値を読む際には、参加の規模を押さえたうえで、誰が費用を負担し、どの地域で教育を提供しているかを考える。
出典:文部科学省、2025年12月26日公表。進学率は再算定後の確定値。文部科学省
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Ⅱ 学びの質
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Ⅱ 質保証:設置・内部改善・外部評価をつなぐ
現在地|Ⅱ 学びの質
大学の役割と学生が多様になるなかで、教育の質を誰が、何に基づいて確かめるのか。大学の裁量と質保証の関係を考える。
仕組み
主な役割
設置認可・届出等
教育を始めるための組織・教員・施設等を確認する
内部質保証
大学自身が教育研究を点検し、継続的に改善する
認証評価
認証評価機関による第三者評価を受け、結果を公表・活用する
機関別認証評価は、国公私立の大学・短期大学・高等専門学校が、7年以内ごとに受ける。専門職大学・専門職大学院等の分野別評価は、5年以内ごとである。
解説メモ|教育目標と、学生が実際に学べることを確かめる
質保証では、教育目標に沿って授業と評価、学習支援が組み立てられ、学生が必要な学修成果に到達できるかを点検する。認証評価は、その仕組みを外部から確認し、大学による改善につなげる制度である。大学を一列に並べるランキングとは目的が異なり、方針や書類の整備が実際の教育にどう結びついているかを捉えることが要点となる。
出典:文部科学省「認証評価制度」。文部科学省
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三つの方針:入学から卒業までを一つの教育として設計する
現在地|Ⅱ 学びの質
方針
内容
DP:ディプロマ・ポリシー
卒業認定・学位授与の方針。どの能力を身につけた者に学位を授与するかを示す
CP:カリキュラム・ポリシー
教育課程編成・実施の方針。どの内容・方法・評価によって能力を育てるかを示す
AP:アドミッション・ポリシー
入学者受入れの方針。どのような準備や関心を持つ者を、どう受け入れるかを示す
設計上の関係
卒業時に求める学修成果を考える
→それを育てる教育課程を編成する
→入学時に必要な準備と、選抜・入学後の学習への接続を考える。
解説メモ|三つの方針を、高校から大学への学びの接続に使う
2014年の中教審答申が提起した高大接続改革は、高校教育・大学入学者選抜・大学教育を一体として見直す構想である。DPに「根拠を用いて地域課題を分析できる」と掲げるなら、CPで資料読解や調査を段階的に学び、APで入学時に求める準備を示す。高校の探究で得た経験を選抜でどう捉え、入学後にどう伸ばすかまでつなげて考える。
出典:中央教育審議会大学分科会「教学マネジメント指針」。文部科学省/文部科学省「高大接続改革」
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教学マネジメント:学生の学びを支える組織運営
現在地|Ⅱ 学びの質
2020年1月22日の「教学マネジメント指針」は、大学が教育目標を達成するために必要な、組織的な運営のあり方を示した。
五つのまとまり
三つの方針によって学修目標を具体化する。
授業科目・教育課程を編成し、実施する。
学修成果・教育成果を把握し、可視化する。
FD・SD、教学IRなどの基盤を整える。
教育に関する情報を公表する。
FDは教育改善に向けた教員の組織的な取組、SDは教職員の能力開発、教学IRは教育・学修に関する情報を分析し、意思決定に用いる取組を指す。
解説メモ|学修者本位の教育を、大学全体で支える
学生がどこで理解につまずき、どの授業や支援によって学習を深めるかを捉えると、科目の順序や教職員の連携を見直す手がかりになる。学修者本位の教育では、学生の経験や必要を踏まえ、目標とする学修成果に到達できる教育と支援を整える。2023年2月24日の追補では、入学者選抜を含めた接続の問題が、さらに扱われた。
出典:文部科学省「教学マネジメント指針」及び追補。文部科学省
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Ⅲ 機会と社会
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アクセス:入学・学習継続・卒業を一続きに考える
現在地|Ⅲ 機会と社会
教育課程の質が高くても、入学や学習継続の条件が整わなければ、その教育には参加できない。質とアクセスを一続きに検討する。
高等教育へのアクセスは、進学を考え、入学し、学び続け、卒業後へ進む各段階で、必要な機会や支援を利用できるかという問題として捉えられる。
段階|進学を考える
関わる条件|情報、周囲の期待、学校での進路支援
段階|入学する
関わる条件|学力、入試、授業料、転居・通学費
段階|学び続ける
関わる条件|生活費、時間、学習支援、健康、所属感
段階|卒業後へ進む
関わる条件|資格、専門性、相談、仕事や継続学習への接続
解説メモ|経済的支援と、大学で学ぶための支援を組み合わせる
家族に大学経験者がいない第一世代学生には、費用の支援とともに、履修や相談の仕方、卒業後の進路を知る機会が必要になる場合がある。障害や言語に応じた配慮、孤立を防ぐ関係も、学習の継続を支える。入学できる人数を増やすことと、入学後に学び続けられる大学をつくることを結びつけることで、教育機会を実際に保障する条件が見えてくる。
出典:中央教育審議会「知の総和」答申のアクセス・学生支援に関する議論。本頁の具体化は授業用整理。文部科学省
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修学支援新制度:誰の、どの費用を支えるか
現在地|Ⅲ 機会と社会
高等教育の修学支援新制度は、2020年4月に始まった。授業料・入学金の減免と、返還不要の給付型奨学金を組み合わせる制度である。
2025年度からは、扶養する子どもが3人以上の多子世帯について、所得制限を設けず、一定額を上限に授業料・入学金を減免する支援が拡充された。
大学の減免上限の目安
区分
授業料・年額
入学金
国公立
約54万円
約28万円
私立
約70万円
約26万円
解説メモ|対象となる学生と、支援される費用を確かめる
「大学無償化」と呼ばれる支援にも、扶養する子どもの数、資産、学業、対象機関、国籍・在留資格等の要件と、減免額の上限がある。給付型奨学金には別途所得等の区分があり、生活費を含むすべての費用が一律に無償になる制度ではない。留学生向け支援とも区別し、誰の負担がどこまで軽減され、どの学生や費用が対象外になるかを具体的に説明する。
出典:文部科学省、2026年度版案内・多子世帯支援FAQ。文部科学省
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大学の国際化:人数から学習経験へ
現在地|Ⅲ 機会と社会
大学の国際化には、留学生の受入れ、海外派遣、共同研究、共同学位、外国語による教育などが含まれる。
これらを通した学び合いには、国籍や経験の異なる学生が、互いの考えを理解し、授業や学生生活に参加できる条件が関わる。
教育上の検討事項
授業で用いる言語と専門内容の理解を支える方法、議論への参加、評価基準、学生間の関係、相談・進路支援を関連づけて考える。
解説メモ|異なる経験から学ぶ授業を組み立てる
国際的なグループでも、特定の学生に発言が偏り、他の学生が作業の補助に回れば、経験を持ち寄って学ぶ機会は限られる。課題の説明、発言の準備、異なる経験を生かせる問い、個々の理解を確かめる評価が必要になる。国際化の研究では、学生数の変化を、授業内容や組織、学生生活がどう変わるかという問いへ結びつけられる。
出典:原稿の大学国際化の論点及び「知の総和」答申。日本教育改革Ⅰ_近世から戦前まで文部科学省
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大学と生涯学習:仕事と学びを往復する
現在地|Ⅲ 機会と社会
概念
中心となる意味
リカレント教育
学校教育を終えた後も、仕事や生活と教育を往復する考え方
リスキリング
職務や産業の変化等に応じて、新しい業務に必要な技能を学ぶこと
履修証明プログラム
大学等が、体系的な学習プログラムの修了を証明する仕組み
科目等履修
学位課程全体への在籍とは別に、一定の科目を履修する仕組み
解説メモ|仕事・家庭生活と両立できる学習条件を整える
成人が大学で学ぶ際には、勤務時間、育児・介護、受講費、通学距離が関わる。夜間・短期・オンライン等の教育課程に、雇用主による時間の保障や相談支援を組み合わせることで、学ぶ機会を利用しやすくなる。学習目的にも、職務能力の向上、地域参加、自己理解などの広がりがあるため、提供する内容と利用できる条件の両面から、大学の役割を考える。
出典:原稿、中央教育審議会のリカレント教育に関する議論。日本教育改革Ⅰ_近世から戦前まで文部科学省
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2025年「知の総和」答申:質・規模・アクセス
現在地|Ⅲ 機会と社会
2025年2月21日、中央教育審議会は、『我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~』を答申した。
少子化、研究力、学生の多様化、地域の人材需要等を背景に、高等教育全体を次の三つの観点から組み直す方向を示している。
観点
主な課題
質
教育研究の高度化、学修者本位の教育、学修成果の把握
規模
人口・需要を踏まえた定員や機能の見直し、連携・再編
アクセス
地理的・社会経済的な条件による機会の差への対応
解説メモ|進学率・人数・教育機会を区別する
18歳人口が減れば、進学率が上昇しても進学者の絶対数は減り得る。高等教育が広く利用される社会であることと、学生数の減少を区別する。機関の縮小は地域の機会に影響し、教育研究の質を維持するにも資源が要るため、内容・定員・共同利用と、通学・生活支援をあわせて考える。「知の総和」は若者の人数だけでなく、社会人等を含む多様な人々の学びと能力形成を捉える。
出典:同答申。文部科学省
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地域の大学:機関の存続と教育機会をどう結ぶか
現在地|Ⅲ 機会と社会
人口減少下では、大学間の連携、教育課程の共同実施、機能の分担、規模の見直しなどが課題となる。
地域で大学が担うもの
教員や医療・福祉等の専門人材を育て、地域研究を進めるとともに、若者の学習や社会人の学び直しを支え、地域の組織・産業と協働する。
解説メモ|教育の質と、地域から学べることを両立させる
地域に大学があっても、教育内容や学生支援を十分に提供できる条件が必要になる。一方、都市部への集約で設備が充実しても、転居が難しい人には利用しにくくなる場合がある。共同授業、サテライト拠点、遠隔教育に移動・生活支援を組み合わせ、地域の人々が質のある教育を実際に受けられる仕組みとして検討することが求められる。
機関を再編する場合には、在学生が卒業まで学べる体制や、転学等への対応も検討する。
出典:中央教育審議会「知の総和」答申。文部科学省
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高等教育の研究関心を深める
現在地|Ⅲ 機会と社会
関心|大学の授業
理論・制度から立てられる問い|DPで掲げた力が、科目の配列や評価を通してどう育てられるか
関心|留学生
理論・制度から立てられる問い|受入れが、授業への参加や学生間の関係の変化にどうつながるか
関心|教育格差
理論・制度から立てられる問い|家計、地域、家族の大学経験が、進学先や学習継続にどう関わるか
関心|地域大学
理論・制度から立てられる問い|教育機会と地域の人材需要を、大学間連携でどう結びつけるか
関心|社会人の学習
理論・制度から立てられる問い|仕事・家庭生活と大学の教育課程は、どのような条件で両立するか
解説メモ|組織の方針を、学生の経験から確かめる
大学の質を高めるという課題は、学生が何を学び、どこにつまずき、どの支援を利用できるかという問いに具体化できる。国際化についても、受入れ人数を、授業の言語、所属感、進路などの経験と関連づけて考えられる。制度や組織の方針が教育課程を通して学生の学びにどう関わるかを捉えることが、高等教育研究の一つの入口となる。
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演習・制度分析・論述
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複数選択問題1:大学の役割を考える
現在地|演習・制度分析・論述
本講座作成・仮想事例
大学が、短期的な就職実績を高めるため、一般教育科目と基礎研究への資源を減らし、企業が求める技能を学ぶ科目を増やす方針を示した。
選択肢を読む前に、大学の役割について本講で学んだ考えを一文で書く。解答後は、誤答がどの理論・概念をどう取り違えているかも説明する。
ニューマンとフンボルト的大学理念を手がかりに、適切な考察を二つ選びなさい。
A.職業に必要な技能と、専門を他の領域に関係づけて判断する知性を、大学教育でどう育てるか検討する必要がある。
B.教養教育は実社会と無関係であるため、大学の社会的責任の外に置かれる。
C.短期的な需要から距離を取って学問を探究することと、その過程から学ぶ教育の意義も検討できる。
D.学問の自由があるため、大学は教育内容や学生の学習について説明する必要がない。
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複数選択問題2:ユニバーサル化をどう理解するか
現在地|演習・制度分析・論述
本講座作成・理論の適用
ある国で高等教育への参加が広がり、家族で初めて進学する学生、働きながら学ぶ学生、異なる言語背景を持つ学生が増えた。
トロウの議論から適切に述べられることをすべて選びなさい。
A.参加率が50%を超えれば、すべての大学の教育内容は同じになる。
B.学生の多様化に応じて、教育課程と学習支援の体制を検討する必要がある。
C.ユニバーサル化は、大学の教育水準が上位段階へ到達したことを意味する。
D.参加が広がった後も、進学先や学習経験の差は研究課題となる。
E.エリート的な機能と、幅広い参加を支える機能が、同じ社会に併存し得る。
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複数選択問題3:三つの方針を教育へつなぐ
現在地|演習・制度分析・論述
本講座作成・教育課程の検討
ある学部のDPには「資料を用いて社会問題を分析できる」とあるが、授業の多くは用語の記憶を中心とし、資料分析は卒業研究で初めて求められる。
改善として適切なものをすべて選びなさい。
A.基礎から発展へ進めるよう、資料を読み、分析し、説明する学習を複数の科目に配置する。
B.DPの文言が公開されているため、内部質保証は十分に機能していると判断する。
C.課程の途中で学修成果を確認し、学生への支援と授業科目の改善につなげる。
D.入学者に求める準備と入学後に育てる能力を区別し、AP・CP・DPを対応させる。
E.認証評価を受ける年度だけ課題を設ければ、継続的な教育改善は不要になる。
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複数選択問題4:修学支援の対象と範囲を理解する
現在地|演習・制度分析・論述
本講座作成・政策解釈
学生が「2025年度から多子世帯は大学が完全無料になり、大学進学の経済的問題は解消した」と述べた。
修正として適切なものを二つ選びなさい。
A.多子世帯とは、現在の扶養状況にかかわらず、過去に3人以上の子どもが生まれた全世帯を指す。
B.減免には対象要件と上限があるため、生活費・通学費なども含めて進学条件を考える必要がある。
C.授業料減免の対象であれば、給付型奨学金も所得等にかかわらず同額となる。
D.経済的支援がある学生には、学習相談や情報提供は必要ない。
E.支援の拡充によって軽減される負担を確認するとともに、対象外の学生や残る費用への対応を検討する。
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複数選択問題5:少子化下の地域大学を考える
現在地|演習・制度分析・論述
本講座作成・仮想材料
地方の大学で入学者が減少している。自治体は、地域の教員や福祉人材を育てる機能を重視している。大学は近隣大学との共同授業を検討しているが、学生からは移動費や時間への不安が出ている。
「知の総和」答申を踏まえ、適切な検討事項をすべて選びなさい。
A.入学者が減った大学は、地域の教育機会と切り離して判断する。
B.地域で必要な教育内容と、大学間で共有できる資源を整理する。
C.共同授業の内容・方法とともに、学生が利用するための交通・時間・通信条件を検討する。
D.再編する場合も、在学生が学習を続け、卒業できるよう対応を計画する。
E.地域に必要な人材を育てる大学では、学生の卒業後の居住地を一律に固定することが望ましい。
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現在地|演習・制度分析・論述
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現在地|演習・制度分析・論述
解説メモ|評価と履修の仕組みが、学生の学び方にどう関わるか
DPで求める力と授業で評価される力が異なるとき、学生は何を重視して学習するだろうか。科目ごとの評価、履修の順序、課題へのフィードバックを調べることで、大学の方針が学生の実際の学びにどう関わるかを考えられる。教学マネジメントを、組織の制度と学生の学習経験を結ぶ問題として研究できる。
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現在地|演習・制度分析・論述
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過去問演習A:早稲田大学・学修者本位の教育
現在地|演習・制度分析・論述
早稲田大学大学院文学研究科 教育学コース/2024年度/専門科目【問題A】1
原題
近年の大学教育改革では、「学修者本位の教育」を実現することが求められている。この「学修者本位の教育」とは何か、その実現のために何が必要とされているのかを整理し、その実現のための課題は何かについて論じなさい。
原試験の指示
次の4題から1題を選んで、1500字以内で答えなさい。
※解答は別紙(横・縦 書)
出典:保管している試験問題「文学研究科 教育学コース.pdf」PDF第1頁に基づく整理版。試験問題PDF(Google Drive)
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現在地|演習・制度分析・論述
本講作成の解説。大学の公式解答・採点基準ではない。
解説メモ|条件と課題を対応させる
授業内の確認観点:定義の正確さ/条件と課題の対応/具体例/論証。
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小論文B:専門発展・大衆化と規模縮小
現在地|演習・制度分析・論述
高等教育・教育政策志望者向け/75分/1,300〜1,500字
資料:2025年「知の総和」答申の記述を本講座が要約。
日本では、大学への参加率の上昇に伴い、大学進学者数は約63万人へ拡大してきた。一方、同答申が一定の前提に基づいて示した推計では、2040年の大学進学者数は約46万人になると見込まれている。少子化に応じた規模の見直しが課題となるなかで、地域の高等教育機関が担う学習機会と専門人材の育成を、どのように保障するかが問われている。
設問
(1)トロウの高等教育段階論を説明し、参加者数の増減と高等教育の性格の変化を区別して述べなさい。
(2)少子化下の日本の高等教育政策について、「質・規模・アクセス」を用いて論じなさい。学生数が減ることを、エリート型への単純な逆戻りと考えてよいかにも言及すること。
推計は確定した将来人口・進学者数ではない。
出典:中央教育審議会答申。文部科学省
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現在地|演習・制度分析・論述
参考にした出題内容:早稲田大学2026年度公式出題意図における、進学の需要・供給、量的拡大と質的充実の分析。本問は独自作成。早稲田大学
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