
シティズンシップ教育
権利を持ち、他者と判断し、社会の形成に関わる
実学志教育学専門課程
講師:KIKI
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本講の中心問題:「よい市民」とはどのような人か
仮想事例
地域の公園にごみが増えた。自分のごみを持ち帰る人、清掃活動を組織する人、ごみ箱の配置や管理の仕組みを調べて改善を提案する人など、さまざまな関わり方がある。
いずれも地域の問題に応える行為であるが、必要となる知識や他者との関係、問題を捉える範囲には違いがある。
誰が市民として位置づけられるか|権利、所属、国籍、生活
何を育てるか|責任、参加、政治的リテラシー
どう学ぶか|討議、社会的活動、学校生活
どの条件が必要か|意見表明、決定への関与、包摂
到達目標は、市民としての行動や態度を、権利・知識・参加・制度との関係から説明できるようになることである。
学ぶ順序:Ⅰ 市民の地位と権利 → Ⅱ 市民像と育てる力 → Ⅲ 学校での学びと参加 → Ⅳ 所属を越えた参加と制度 → 自分で説明する。
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Ⅰ 市民の地位と権利
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シティズンシップ:地位・権利・実践を区別する
現在地|Ⅰ 市民の地位と権利
シティズンシップは、共同体の成員としての地位、その地位に関わる権利と責任、社会に参加する実践などを含む概念である。
法的地位|どの国家や制度の成員として位置づけられるか
権利と責任|何を保障され、他者とどのような関係を持つか
帰属と承認|自分が社会の一員であると感じられるか
参加の実践|共通の問題や意思決定にどう関わるか
解説メモ|国民・住民・市民の範囲を区別する
国民は国家への所属、住民は地域で実際に生活することに着目する。本講でいう市民は、権利を持ち、公共的な問題に関わる主体を指す。三つの範囲は完全には重ならない。外国籍の住民や子どもも、学校・地域のルールや資源配分の影響を受ける。選挙権の資格と、現在の生活について意見を表し参加する機会を区別し、誰の声が制度から抜け落ちやすいかを考える。
参考:原稿の市民・権利・参加に関する整理。シティズンシップ教育
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アンダーソン:国民という共同体はどう共有されるか
現在地|Ⅰ 市民の地位と権利
ベネディクト・アンダーソン(Benedict Anderson)は、『想像の共同体』(1983年)で、互いに会ったことのない人々が、同じ国民としてのつながりを思い描くことに注目した。
言語、出版物、歴史の語り、地図などは、広い範囲に暮らす人々が共通の世界を理解し、所属を共有することに関わる。
教育から考える問い
学校で教えられる歴史や文化を通して、どのような「私たち」が形成されるのか。そのなかで、誰の経験が中心となり、誰の経験が見えにくくなるのかを考える。
解説メモ|所属の共有が、連帯や成員の範囲に関わる
人々が共通の所属を思い描くことは、連帯や公共的な負担、相互の責任を支えるため、「想像された」という表現は、共同体が現実に存在しないという意味ではない。ただし、成員の典型を一つの言語や文化に限ると、その条件に合わない人は周辺に置かれやすい。教育では、共通性を育てながら、多様な人々の経験を「私たち」の経験としてどう位置づけるかが問われる。
出典:Anderson, Imagined Communities。Verso
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マーシャル:市民的権利・政治的権利・社会的権利
現在地|Ⅰ 市民の地位と権利
T・H・マーシャル(T. H. Marshall)は、『シティズンシップと社会的階級』(1950年)で、市民としての権利を三つに整理した。
権利
主な内容
英国史を整理する際の中心的な時期
市民的権利
身体・言論・信仰の自由、契約、裁判等
18世紀
政治的権利
政治的権力の行使への参加
19世紀
社会的権利
教育や生活保障を通した社会生活への参加
20世紀
この順序は英国の歴史についての整理であり、すべての国や集団に共通する発展法則とは区別する。
解説メモ|自由と参加を、教育・生活の保障が支える
意見を表す自由を実際に使うには、情報を理解するための教育や、生活を維持しながら社会に関われる条件が必要になる。社会的権利は、このように、市民的・政治的権利を行使する基盤として捉えられる。三つの権利を関連づけることで、シティズンシップ教育を、本人の意識や能力の育成と、教育・福祉・経済的条件の保障にまたがる課題として考えられる。
参考:原稿のマーシャル論、クリック報告における三権の参照。シティズンシップ教育クリック報告
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アクティブ・シティズンシップと福祉の関係
現在地|Ⅰ 市民の地位と権利
アクティブ・シティズンシップは、市民が公共的な問題に能動的に関わることを重視する考え方であり、地域活動、意見表明、共同の問題解決などを含む。
1990年代の英国では、福祉を国家が提供する責任と、地域・個人が担う役割の配分が政治課題になった。1998年のクリック報告もこの変化に触れ、相互扶助や奉仕を評価しながら、公共政策の形成に関わる政治的理解の必要を示した。参加の強調が、権利保障を広げるのか、公的責任を個人へ移すのかを問う。
参加を広げる方向
自分たちに関わる制度やサービスについて、市民が検討し、改善に働きかける機会を広げる。
責任を個人へ移す方向
公的な支援の不足を、市民の自助や無償の活動によって補うことを求める。
解説メモ|参加を支える生活条件と、公的責任を考える
活動に使える時間は、仕事、ケア、健康などの事情によって異なるため、参加回数を「よい市民」の基準にすると、参加しにくい人が低く評価される場合がある。市民が意見を持ち、活動に関わることは、権利や生活の保障に支えられて実現する。市民が担う役割を論じる際には、参加する人の負担と、その参加を可能にする公的支援をあわせて考える。
参考:原教材の福祉国家・参加・社会的排除に関する議論。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
追加出典:Crick Report(1998)、印刷pp.9–10。
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Ⅱ 市民像と
育てる力
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三つの市民像:どのような社会への関わりを育てるか
現在地|Ⅱ 市民像と育てる力
権利を保障することを確認したうえで、その権利を使う市民にどのような関わりを期待するかを比べる。育てたい市民像が違えば、活動や評価も変わる。
ウェストハイマーとカーン(Westheimer & Kahne, 2004)は、民主主義教育で重視される市民像を、三つに整理した。
市民像
中心となる関わり
個人的に責任を果たす市民
日常生活で責任を持って行動し、他者を助ける
参加する市民
組織や共同の活動に参加し、その運営を担う
社会的公正を志向する市民
問題を生む制度や構造を考え、変化に働きかける
解説メモ|教育が目指す市民像と、学習内容を対応させる
三つの市民像は、社会への関わり方の違いを捉える分類であり、順番に進む発達段階ではない。個人の責任、共同活動の運営、制度の検討は、一つの実践に組み合わされることもある。授業を分析する際には、どの関わり方を中心に置き、そのための知識や行動をどう学べるようにしているかを確かめると、活動の教育的な特徴が明確になる。
出典:Westheimer & Kahne(2004)“What Kind of Citizen?”。Sage Journals
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同じ地域課題でも、学ぶ内容は異なる
現在地|Ⅱ 市民像と育てる力
本講座作成:フードバンクを題材とする三つの学習
学習の構想
学ぶ内容
食品を寄付する
他者への配慮、寄付のルール、個人の責任
回収と配布を企画する
役割分担、必要の把握、組織間の協力
食料へのアクセスを調べる
所得、福祉制度、流通、権利と資源配分
解説メモ|目前の支援と、困難が生じる条件を関連づける
寄付では他者への配慮、回収・配布の企画では共同活動の運営、食料へのアクセスの調査では制度や資源配分の理解が学習の焦点となる。授業では、これらを関連づけ、今ある困難への対応と、その困難が繰り返される条件を考えられる。どの対応が必要かは、資料や異なる経験をもとに学習者が検討し、教師が望む社会批判へ誘導することは避ける。
理論との対応は、前頁の三類型を用いた本講座の整理である。
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クリック報告:責任・共同体参加・政治的リテラシー
現在地|Ⅱ 市民像と育てる力
1998年9月、バーナード・クリックが委員長を務めた諮問委員会は、学校でのシティズンシップ教育と民主主義教育に関する報告を公表した。公共生活への無関心や不信への懸念、学校によって学習機会が不均等であるという問題意識を背景に、全ての生徒が政治的な判断と参加を学べるようにすることを提言した。
三つの柱
内容
社会的・道徳的責任
他者に配慮し、自分の行為が他者に与える影響を理解する
共同体への参加
地域の問題や共同活動に関わる経験を得る
政治的リテラシー
制度・権力・資源配分を理解し、判断・行動する力を育てる
イングランドでは、2002年9月から、地方教育当局が維持する学校の11〜16歳段階で、シティズンシップが法定カリキュラムに位置づけられた。
解説メモ|共同活動の経験を、公共的な判断に結びつける
地域活動に関わると、誰が資源の使い方を決め、負担がどのように配分されるかという問題にも接する。クリック報告は、他者への責任や共同体への参加を、こうした政治的な理解と関連づけて教育内容に位置づけた。制度の説明では、英国のなかでもイングランドを対象とすることと、法定カリキュラムが適用される学校の範囲を明確にする。
出典:クリック報告、英国教育省。クリック報告
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政治的リテラシー:共通の問題を判断するための知識
現在地|Ⅱ 市民像と育てる力
政治的リテラシーは、政治や社会の制度についての知識を用い、公共的な問題を理解し、判断し、他者と関わる力を含む。
仮想事例:地域のバス路線の縮小
制度・権限|誰が運行や補助金を決めるか
利益と負担|利用者、運転手、納税者等にどう影響するか
選択肢|路線維持、便数調整、代替交通には何が必要か
意思形成|どこに意見を出し、誰と協議できるか
解説メモ|判断の根拠と、社会に働きかける経路を知る
バス路線の維持や廃止を考える際には、費用、移動の権利、労働、環境などを踏まえ、それぞれの案が誰にどのような影響を与えるかを検討する。制度や権限を理解することは、その考えを誰に伝え、どこで協議できるかを知ることにもつながる。政治的リテラシーは、こうした知識を使って、自分の判断と行動の理由を説明する力として捉えられる。SNSや生成AIで得た情報も、発信者、作成時点、原資料、反対の証拠を確かめ、事実の確認と政策上の価値判断を分けて扱う。
出典:クリック報告の政治的リテラシー概念。事例は本講座作成。クリック報告
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日本の主権者教育と「公共」
現在地|Ⅱ 市民像と育てる力
2015年の公職選挙法改正によって選挙権年齢が18歳以上へ引き下げられ、2016年6月に施行された。これを受け、高校段階から政治や社会の形成について学ぶことの重要性が、改めて示された。
2018年告示の高等学校学習指導要領では、公民科の必履修科目として**「公共」**が設けられ、2022年度入学生から実施された。
「公共」の内容
学習の位置
A 公共の扉
判断の手がかりとなる概念・原理
B 自立した主体としてよりよい社会の形成に参画する私たち
法・政治・経済等の具体的な問題
C 持続可能な社会づくりの主体となる私たち
現実社会の課題の探究
解説メモ|原理を学び、現実の問題について判断する
主権者教育では、投票の手続を知ることとともに、社会の仕組みや権利、立場による利害の違いを理解し、根拠をもって考えを表すことが求められる。「公共」は、判断に用いる概念・原理を学び、法・政治・経済の具体的な問題に適用し、現実の課題を探究する構成を取る。制度の知識を、公共的な判断に使う学習として理解できる。
出典:文部科学省主権者教育資料、高等学校学習指導要領解説公民編。文部科学省
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Ⅲ 学校での学びと参加
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知識・活動・学校生活をつなぐ
現在地|Ⅲ 学校での学びと参加
政治や社会について知ることを、判断し参加する経験へどうつなぐか。授業の内容に加えて、学校生活で意思決定に関われる条件を検討する。
本講での授業設計上の整理
社会の仕組みを学ぶ|権利、制度、歴史、政策を理解する知識
公共的な問題に取り組む|資料を比較し、協議し、提案する経験
学校生活をつくる|ルールや共同生活の決定に関わる経験
解説メモ|日本の主権者教育を学校教育全体から考える
2026年4月24日の社会・地理歴史・公民ワーキンググループで、桑原委員は、主権者教育を投票率向上や模擬投票の実施に狭める理解を課題として示した。学校の教育活動全体を見直し、体験の中で何を考え、どの根拠で判断したかを振り返る方向を提案している。校則の協議や地域調査も、権利・制度の知識を使う学習と結びつけられる。これは審議に提出された論点であり、決定済みの新学習指導要領ではない。
この三分類は本講座の授業設計用の整理であり、特定の思想家の原文分類ではない。
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出典:同WG第7回・資料2、PDF pp.3–4、9。

政治的中立性:対立する問題を扱うための条件
現在地|Ⅲ 学校での学びと参加
教育基本法第14条第1項は、良識ある公民として必要な政治的教養を教育上尊重することを定める。同条第2項は、法律に定める学校が、特定の政党を支持・反対するための政治教育その他の政治的活動を行うことを禁止している。
教育上の区別
政治や社会の問題を理解し、複数の立場から考える学習。
特定政党への支持・反対を目的として行う教育活動。
解説メモ|対立を含む問題について、学習者の判断を支える
税、福祉、環境、労働などには、価値や利益が対立する問題が含まれる。これらを公共的な判断の教材として扱う際、教師は、事実と意見を整理し、異なる立場を理解するための資料を用意する。評価でも、特定の結論への同意を求めず、根拠を用いて考えを説明できるかを捉える。このように、中立性を、政治的教養の学習と自律的な判断を支える条件として考える。
出典:教育基本法第14条、高等学校学習指導要領解説公民編。文部科学省
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ボイテルスバッハ・コンセンサス:争点をどう教えるか
現在地|Ⅲ 学校での学びと参加
1976年のドイツの政治教育をめぐる協議から、ボイテルスバッハ・コンセンサスと呼ばれる原則が整理された。
原則
授業での意味
圧倒・教化の禁止
教師の権威によって、学習者が自ら判断する機会を奪わない
論争性の尊重
社会や学問で論争されている問題を、授業でも論争として扱う
学習者の立場からの分析・行動
自分に関わる状況や利害を理解し、働きかけを考えられるようにする
解説メモ|異なる主張の根拠と、権利への影響を検討する
論争性を尊重する授業では、政策の選択肢を比較するとともに、確認できる事実や憲法上の権利、差別・暴力への影響を確かめる。異なる主張を示すことと、すべてを同じ妥当性のあるものとして扱うことは区別される。ボイテルスバッハ・コンセンサスは、日本の法令とは区別し、学習者が根拠に基づいて考えを形成する授業を検討するための手がかりとして用いる。
出典:ドイツ連邦政治教育センター。bpb.de
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Lundyモデル:意見の表明と、意思決定への反映
現在地|Ⅲ 学校での学びと参加
ローラ・ランディ(Laura Lundy)は、子どもの権利条約第12条を具体化するため、四つの要素を示した。
Space:場|安全で参加しやすい意見表明の機会がある
Voice:声|意見を形成し、表現するための支援がある
Audience:聴き手|意見を聴く責任のある人に届く
Influence:影響|意見が適切に考慮され、どのように扱われたかが説明される
解説メモ|表明した意見が、誰に届き、どう扱われるか
アンケートへの回答が意思決定への参加となるには、誰が意見を受け取り、どの事項を検討し、その結果をどう説明するかが明確である必要がある。希望した案が採用されない場合にも、検討の過程と理由を知り、再び関われることが、その後の参加を支える。Lundyモデルは、意見を表す機会から、その意見が判断のなかで扱われる過程までを捉える視点を与える。
出典:Lundy(2007)、Ward & Lundyのモデル解説。British Educational Research Association
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学校生活で参加を学ぶ:居場所の利用ルールを考える
現在地|Ⅲ 学校での学びと参加
本講座作成・仮想授業
学校が昼休みの図書室利用を見直す。静かに本を読みたい生徒、友人と過ごしたい生徒、教室に居づらい生徒などによって、図書室に求めるものは異なる。
学習の組立て
利用経験を集め、図書室の目的と、人員・安全上の条件を確認する。そのうえで複数の案を比較し、担当者との協議と試行を通して、利用の仕方を改善する。
解説メモ|判断できる範囲を共有し、必要の違いを考える
提案を考える前に、変更できること、学校の責任として判断すること、追加の予算が必要なことを共有すると、生徒は実際の条件に即して検討できる。利用者の希望を比べる際には、多数決の結果と、少数の生徒にとって欠かせない居場所の機能をあわせて考える。共同生活のルールをつくる経験が、異なる必要をどう扱うかという学習につながる。
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Ⅳ 所属を越えた参加と制度
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グローバル・シティズンシップ:異なる所属をつなぐ
現在地|Ⅳ 所属を越えた参加と制度
グローバル・シティズンシップは、国境を越えた相互依存や人権、地球規模の課題に対する責任を考える概念である。世界共通の国籍や選挙権が成立したことを示す法的な地位とは区別する。
教育で扱う関係
地域での消費と海外の労働、気候変動と生活、移住と文化、紛争と人権などを、地域社会で暮らす多様な人々の参加とも関連づけて考える。
解説メモ|身近な物を通して、遠くの人々との関係を知る
衣服を題材に、生産、価格、労働、環境を調べると、自分の消費が、他の地域の労働者や企業、政府とどう結びついているかを考えられる。国際問題を生活上の具体的な関係から捉えることで、地域や国への所属を持ちながら、他の社会の人々の権利や生活について判断する学習が可能になる。これが、多層的な市民性を考える入口となる。
参考:原教材のグローバル・シティズンシップの位置づけ。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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現在の制度と、これからの改革を区別する
現在地|Ⅳ 所属を越えた参加と制度
イングランドの動向
2026年9月24日付の英国上院図書館の整理によると、現行制度では、シティズンシップは対象となる中等学校の法定教科に位置づけられている。初等段階には、同じ義務づけは適用されていない。
政府は2025年11月、ナショナル・カリキュラムに従う初等学校にも必修化を広げ、改訂カリキュラムを2028年9月から実施する方針を示している。
解説メモ|子どもの現在の経験から、市民性の学習を組み立てる
初等段階では、身近なルール、公平さ、共同の決定、意見の表し方など、子どもが日々経験している問題を扱える。こうした学習を、その後の政治制度や公共的な問題の理解にどうつなげるかが課題になる。日本の社会科、特別活動、「公共」の接続を考える際にも、必修化という制度上の位置づけと、学習内容・教師の支援を区別して検討する手がかりとなる。
現行制度と、2028年からの実施予定を区別して理解する。
出典:英国上院図書館、2026年9月24日。House of Lords Library
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研究関心を、市民性が育つ過程へ結びつける
現在地|Ⅳ 所属を越えた参加と制度
生徒会・校則
生徒が議題を提起し、学校の決定に関わる経路は何か
ボランティア学習
活動経験は、個人の責任と制度への理解をどう結びつけるか
主権者教育
対立する問題を扱う授業で、学習者の判断はどう支えられるか
外国につながる子ども
学校が構成する「私たち」に、どのような経験が位置づけられるか
地域の若者参加
若者の提案を受け取る行政・団体側の仕組みはどう働くか
解説メモ|参加への関心を、学校や社会の受け止め方と結びつける
若者の参加を考える際には、本人の関心とともに、その場で何を決められ、意見をどう扱われてきたかを確かめられる。Lundyモデルからは聴き手と影響、三つの市民像からは活動が育てる社会理解に注目できる。学習者の意識や行動を、学校・社会が設ける参加の仕組みと関連づけることで、市民性が育つ過程を具体的に捉えられる。
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演習・市民像の比較・論述
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複数選択問題1:市民性と社会的権利
現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座作成・議論の検討
「市民としての権利は制度上保障されているため、参加するかどうかは本人の意欲だけの問題である」という意見が出た。
選択肢を読む前に、「権利があること」と「権利を行使できること」の違いを一文で説明する。解答後は、誤答が見落とした教育・生活上の条件を述べる。
マーシャルの議論を用いた応答として適切なものを二つ選びなさい。
A.参加に必要な教育や生活条件が不足すれば、権利を実際に行使する機会にも差が生じる。
B.社会的権利は、政治的権利が不要になった後に成立する。
C.三つの権利を関連づけることで、自由、意思決定への参加、生活保障を一緒に考えられる。
D.権利があれば、情報を理解する力や参加できる時間は自動的に得られる。
E.英国史についての整理を、すべての国が同じ順序で進む法則として用いられる。
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複数選択問題2:活動に表れる市民像
現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座作成・授業案の比較
甲:地域の清掃活動に参加し、個人として責任を持って行動する。
乙:住民と清掃活動を企画し、役割分担や連絡の仕組みを整える。
丙:ごみが増える条件と管理制度を調べ、住民や行政と改善策を検討する。
三つの市民像を用いた説明として適切なものをすべて選びなさい。
A.甲には、個人的に責任を果たす市民像に関わる学習が含まれる。
B.乙では、共同活動に参加し、その運営を担うための知識や経験が重要になる。
C.丙を行えば、甲や乙に含まれる学習は不要になる。
D.同じ授業のなかで、個人の行為、共同活動、制度の検討を関連づけられる。
E.三つは年齢順の発達段階なので、小学生は甲だけを学ぶべきである。
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複数選択問題3:対立する政策を扱う授業
現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座作成・仮想事例
授業で、地域のバス路線の縮小を取り上げる。教師自身は路線維持を支持しているが、生徒には利用者、事業者、納税者などの立場から考えさせたい。
適切な授業設計を二つ選びなさい。
A.教師の結論を伝える前に、その結論に賛成する理由だけを生徒に探させる。
B.必要な情報と複数の選択肢を示し、費用・権利・負担の関係を検討させる。
C.政治的中立性を守るため、現実に対立している問題はすべて授業から除く。
D.根拠の扱い方や他の立場への理解を捉え、提案をどのように説明しているかを評価する。
E.資料があれば、権利侵害を含む主張も、根拠の違いを検討せず同じ妥当性のあるものとして扱う。
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複数選択問題4:意見は届いているか
現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座作成・仮想材料
学校が校則についてアンケートを行い、多くの意見が集まった。しかし、その後に結果は公表されず、どの意見が検討されたかも分からない。自由記述の質問を理解しにくく、回答できなかった生徒もいる。
Lundyモデルから、改善すべき点をすべて選びなさい。
A.質問を理解し、意見を形成・表現できるよう、説明や回答方法を工夫する。
B.回答が提出された時点で、四つの要素はすべて満たされる。
C.意見を聴く責任のある人と、その後の検討の経路を明らかにする。
D.意見を尊重するには、すべての要望をそのまま採用しなければならない。
E.意見をどのように考慮したかを説明し、再び意見を出せる機会を設ける。
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複数選択問題5:「参加しない生徒」をどう理解するか
現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座作成・教育活動の評価
学校が地域活動への参加を重視し、休日の参加回数を市民性の主要な評価基準にした。生徒のなかには、家族のケアや移動の困難によって参加しにくい者もいる。
本講の内容から適切な考察をすべて選びなさい。
A.休日に参加しない生徒は、社会への関心が低いと判断できる。
B.参加に使える時間や交通手段など、生徒ごとの条件を確認する必要がある。
C.参加回数を同じ基準で数えれば、評価の公正さは十分に保障される。
D.授業内での協議、調査、提案など、社会に関わる複数の学習機会を設けられる。
E.活動の量とともに、権利や制度をどう理解し、他者とどのように判断したかを捉える必要がある。
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現在地|演習・市民像の比較・論述
市民性を育てる教育では、学習内容と、それを学べる参加機会の両方を確かめる。
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小論文A:教育学共通基礎・子どもの参加
現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座作成/60分/1,000〜1,200字
学校では、子どもの意見を尊重するため、アンケートや話合いが行われている。その機会を学校生活への参加につなげるには、意見がどの決定に関わるかを明らかにし、表現しにくい生徒にも支援を用意する必要がある。意見を聞く機会と、その意見を検討し、結果を伝える仕組みを結びつけることが、民主的な社会を学ぶ経験を支える。
設問
子どもが学校生活の意思決定に参加することには、どのような教育的意義と課題があるか。具体的な場面を挙げ、教師や学校の責任と関連づけて論じなさい。
権利、学習経験、参加条件を結びつけ、用いる概念が、その場面をどう説明するかを示すこと。
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材料:本講座作成。

現在地|演習・市民像の比較・論述
本講座の評価基準
教育的意義25/具体的な課題25/教師・学校の役割25/論証15/日本語10。
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過去問演習B:東京大学・社会科で市民性を育む
現在地|演習・市民像の比較・論述
東京大学大学院教育学研究科 教育内容開発コース/2026年度/専門科目・Ⅲ 選択問題3
原題
社会科の学習を通して市民性を育むことの重要性と難しさについて論じなさい。
原試験の指示
選択問題(以下の1~6の六問より一問選択)
次の問いのうち、Ⅰ コース共通問題(必須)、Ⅱ コース共通問題(必須)に加えて、Ⅲ 選択問題(一問選択)六問のなかから一問を選び、合計三問について解答しなさい。
外国人受験者も日本語の文章で解答すること。
出典:保管している試験問題「东大教育学 2026年度.pdf」教育内容開発コース・Ⅲに基づく整理版。东大教育学 2026年度
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