
リテラシーと教育
情報を得て理解し、表現と社会参加に生かす
実学志教育学専門課程
講師:KIKI
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本講の中心問題: 情報や技術の利用は、何を学ぶことにつながるか
社会的背景と、本講座作成・仮想事例
学校・家庭・地域に加え、テレビ、インターネット、SNS、生成AIが、人々の知識や価値観に関わるようになった。情報を得る経路が広がるほど、内容の信頼性、誰の経験が表されるか、自分が何を理解したかを確かめる学習が重要になる。
検索と生成AIで発表資料を完成させても、概念の関係や別の事例への応用を説明できない生徒がいる。一方、読み上げや図を使うことで、文章の理解と議論への参加が可能になる生徒もいる。情報環境の変化を一律の能力低下と捉えず、技術が何を支え、学習者が何を担うかを問う。
出典:文部科学省『教育の情報化に関する手引』第1章(本講の背景説明に対応)文部科学省
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本講の中心問題: 情報や技術の利用は、何を学ぶことにつながるか
リテラシーとは何か → 読み書き、社会的実践、表現の多様性
情報はどう届くか → メディアの構成、推薦、情報の信頼性
技術を使うと何が変わるか → 学習の支援、代行、格差
教育は何を保障するか → 知識、判断、表現、参加の条件
到達目標は、技術の利用状況と学習成果を区別し、情報環境に応じた教育を構想できるようになることである。
学ぶ順序:Ⅰ リテラシーの意味 → Ⅱ 情報が届く仕組み → Ⅲ 技術と学習条件 → Ⅳ 学習を保障する設計 → 自分で説明する。
出典:文部科学省『教育の情報化に関する手引』第1章(本講の背景説明に対応)文部科学省
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Ⅰ リテラシーの意味
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基礎的・機能的・批判的リテラシー
現在地|Ⅰ リテラシーの意味
観点
中心となる内容
基礎的な読み書き
文字や文章を理解し、書いて表す
機能的リテラシー
生活・仕事・社会参加のなかで読み書きを使う
批判的リテラシー
テキストの前提や立場、権力関係、見えにくい経験を検討する
本講座作成・例
制度の案内を読み、自分が利用対象に含まれるかを判断する。さらに、その利用条件を確かめ、どのような人にとって利用しにくい制度になっているかを考える。
解説メモ|読み書きの技能を、利用と検討に生かす
制度の条件を検討するには、案内文の意味を理解し、それを自分や他者の生活に照らして読むことが必要になる。三つのリテラシーは、このように一つの活動のなかで互いに関わっており、後のものが前のものを不要にする関係にはない。リテラシー教育では、技能の習得を、誰がどの場面でその技能を使い、何を理解・判断できるようになるかと結びつけて考える。
出典:基礎教材の機能的・批判的リテラシーの整理。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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マルチリテラシーズ:言語・文化と表現様式の多様性
現在地|Ⅰ リテラシーの意味
ニュー・ロンドン・グループ(1996)は、文化・言語の多様性と通信手段の変化によって、仕事や市民生活で必要な読み書きも変わると論じた。一つの標準言語の文章を中心とする教育では、異なる相手と意味を確かめ、画像・音声などを用いて伝える課題を十分に扱えない。そこで、次の二つの多様性を結びつけるマルチリテラシーズを提案した。
二つの多様性
言語・文化・社会的背景の多様性。
文字、画像、音声、動作、空間配置等、意味を表す方法の多様性。
学習者は、他者がつくった表現を読み取るとともに、目的や相手に応じて表現の資源を組み合わせ、新たな意味をつくり出す。
解説メモ|誰に何を伝えるかによって、表現の組合せを考える
地域の案内を作る場合、住民、観光客、日本語学習者では、必要な情報や説明が異なる。文章、地図、音声をどう組み合わせるかを考えることは、受け手の文化や言語、知識を踏まえて、伝わる意味を検討する学習になる。マルチリテラシーズの焦点は、このような意味形成にあり、多数の機器を操作したり、文章に画像を加えたりすることだけでは捉えられない。
出典:The New London Group(1996), “A Pedagogy of Multiliteracies”。The New London Group(1996)原著論文
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情報・メディア・デジタル・AIリテラシー
現在地|Ⅰ リテラシーの意味
概念
中心となる問い
情報リテラシー
必要な情報をどう見つけ、評価し、用いるか
メディア・リテラシー
情報は誰によって、どのような形式・目的で構成されるか
デジタル・リテラシー
デジタル環境で安全・適切に活動し、表現・参加できるか
AIリテラシー
AIの仕組み、限界、影響を理解し、利用をどう判断するか
四つの概念は重なり合いながらも、情報や技術の異なる側面に注目している。
解説メモ|MILは、情報の評価を表現・権利・参加につなぐ
UNESCOのメディア・情報リテラシー(MIL)は、情報源の評価と、メディアが意味を構成する仕組みの理解を結びつけ、表現と社会参加を支える。地域紹介を作る授業では、正確さに加え、誰の経験を選んだか、資料の出典を示したか、写真や個人情報をどう扱うかを検討する。情報モラルは、他者の権利と自分の責任を考える基盤であり、安全な操作だけに限定しない。
出典:基礎教材のリテラシー整理、UNESCOのMIL・AI教育枠組み。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へUNESCO/UNESCO(2021)Media and Information Literate Citizens/UNESCO MIL curriculum Part1(解説メモの説明に対応)
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Ⅱ 情報が届く仕組み
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メディアの構成:事実の選び方が、伝わる意味に関わる
現在地|Ⅱ 情報が届く仕組み
ニュース、広告、動画、教科書等では、情報を選び、順序を決め、見出しや画像を組み合わせることで内容が構成される。
本講座作成・比較例
同じ地域の空き家を扱っていても、「人口減少の象徴」として紹介する記事と、「住民による新しい活動の拠点」として紹介する記事では、注目される人々や解決策が異なる。
解説メモ|正確さの確認と、問題の描かれ方の分析
事実に基づく記事でも、何を取り上げ、誰の話を中心にし、何を省くかによって、読者が捉える地域の姿は変わる。メディア・リテラシーでは、情報の正確さを確かめるとともに、こうした選択がどのような問題像をつくるかを検討する。自分で記事を書き、見出しや話者を選び直す活動は、構成の違いが意味に与える影響を考える機会になる。
出典:UNESCO(2021)MILカリキュラム。比較事例は本講座作成。UNESCO IITE
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推薦と集団内の共有:接する情報が偏る過程
現在地|Ⅱ 情報が届く仕組み
フィルターバブルは、個人に合わせた情報提供によって、異なる情報に接しにくくなる問題を捉える概念である。
エコーチェンバーは、似た見方を持つ人々のあいだで情報や意見が反復され、その見方が強化される状況を捉える概念である。
区別すること
情報の推薦・選別による偏りと、人間関係のなかでの共有による偏りを区別する。実際の利用では、両者が組み合わされる場合もある。
解説メモ|推薦の仕組みと、利用者の選択をあわせて捉える
接する情報の範囲は、推薦機能とともに、何を検索し、誰を信頼し、どの集団で共有するかによっても変わる。そのため、推薦機能があることだけから、すべての利用者が閉じた情報空間に入ると判断することはできない。授業では、普段提示される情報の範囲を確かめ、別の情報源と比較しながら、集団内で共有されている前提も検討できる。
出典:原稿の情報環境に関する概念整理。リテラシーと教育_情報・メディア・デジタル・AI
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誤情報と偽情報:内容と意図を区別する
現在地|Ⅱ 情報が届く仕組み
誤情報は、発信者に欺く意図があるかどうかとは区別して、情報の内容に誤りがあることを捉える際に用いられる。偽情報は、欺く意図を伴って作成・流通させる情報を指す。
内容の誤りを確認することと、発信者の意図を判断することには、それぞれの根拠が必要になる。
本講座作成・検討の手順
主張を特定して元の資料に戻り、日時と文脈を確かめる。独立した情報源とも比較し、確認できたことと、まだ判断できないことを分ける。
解説メモ|判断の根拠と、確認できた範囲を明確にする
グラフを使った投稿であれば、元の調査が誰を対象とし、どの指標を示しているかを確認することで、投稿の説明が妥当かを検討できる。情報を一律に疑う態度より、確かめる手順を身につけることが判断を支える。検証では発信者への評価を急がず、根拠によって確認できたことと、不明な点を分けて示す。
出典:UNESCO(2021)MILカリキュラム。手順は本講座による授業用整理。UNESCO
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Ⅲ 技術と学習条件
情報教育の対象は、なぜ広がったか
日本では1970年代、高校の工業・商業分野で情報処理教育が始まった。社会の情報化に対応するには、専門家の養成に加え、一般の学習者も情報を選び、理解し、利用できることが課題となった。1986年の臨時教育審議会は、情報活用能力を読み・書き・算盤に並ぶ基礎として位置づけた。
学校全体の学習へ
1989年告示の学習指導要領は、各教科等で情報活用能力を育てることを明確にした。1999年告示・2003年度実施の高校学習指導要領では、普通教科「情報」が必履修となった。
次の問い
共通に学ぶ知識と、各教科でそれを使う経験をどう結ぶか。同じ端末があっても、利用と成果に差が生じるのはなぜか。次頁から、能力・教育課程・学習条件を関連づけて考える。
出典:文部科学省『学制百二十年史』情報化への対応/平成11年高等学校学習指導要領 情報/同 附則(2003年4月1日施行)
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デジタル・デバイド:アクセス・利用・成果の違い
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
情報の偏りを見分けるには、接続できることに加え、読み解いて利用する力が必要になる。技術を持つ条件と、学習につなげる条件を分けて考える。
デジタル・デバイド研究では、機器や通信を利用できるかという差に加え、利用に必要な技能や方法、利用によって得られる成果の差が検討されている。
水準
教育での例
アクセス
端末、通信、学習場所があるか
技能・利用
必要な操作や検索を行い、説明を理解できるか
成果
利用が学習、進路、支援を得ることにつながるか
解説メモ|配備された機器が、どのような学習に使われるか
同じサービスでも、課題の意味を相談できる相手、学習時間、既有知識によって、得られる成果は変わり得る。van DeursenとHelsperの研究は、利用量からさらに、利用によって実際に得られる利益へと検討を広げた。教育政策でも、機器の配備、使い方、学習成果を区別すると、どの段階にどのような支援が必要かを捉えられる。
出典:van Deursen & Helsper(2015), “The Third-Level Digital Divide”。Emerald Publishing
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日本の情報教育:各教科の学びを支える基盤
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
2017・2018年告示の学習指導要領は、情報活用能力を全教科の学びを支える基盤に位置づけた。各教科で情報を使う経験と、情報の仕組みを体系的に学ぶ内容を結びつけ、操作の習得を問題の発見・解決に生かすことが課題となる。
学校段階等
主な位置づけ
小学校
各教科等での情報活用、2020年度からのプログラミング教育
中学校
技術・家庭科の技術分野等と、各教科での情報活用
高等学校
2022年度入学生から「情報Ⅰ」が共通必履修科目
大学入学共通テスト
2025年度から「情報Ⅰ」を出題
解説メモ|共通の知識と、各教科で使う経験を結ぶ
情報教育は、機器の操作に加え、情報の収集・分析・表現、仕組みの理解、責任ある参加を扱ってきた。現在は、各教科で育てる力と「情報Ⅰ」等で体系的に学ぶ内容を結びつけることが課題となる。小学校のプログラミング教育は各教科等の中で行い、独立した全国共通教科の新設とは区別する。
出典:文部科学省『教育の情報化に関する手引』、情報科特設ページ、大学入試センター。文部科学省『教育の情報化に関する手引』/『学制百二十年史』情報化への対応/旧高等学校学習指導要領・情報/平成11年高等学校学習指導要領 附則(平成15年4月1日施行)(冒頭の経緯説明に対応)
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日本の情報教育:各教科の学びを支える基盤
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
ノートを閉じて説明する
何を評価したいかを先に言い、その後で「情報活用能力のうち、情報を集める・整理する・分析する・表現する、どの活動を見取るか」を具体例で説明する。端末を使った事実だけを学習成果としない。
出典:文部科学省『教育の情報化に関する手引』、情報科特設ページ、大学入試センター。文部科学省『教育の情報化に関する手引』/『学制百二十年史』情報化への対応/旧高等学校学習指導要領・情報/平成11年高等学校学習指導要領 附則(平成15年4月1日施行)(冒頭の経緯説明に対応)
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「情報Ⅰ」:社会・表現・計算・データを結びつける
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
「情報Ⅰ」は、次の四つの内容で構成される。
内容
学習する関係
情報社会の問題解決
情報・技術と、社会の問題・法・倫理
コミュニケーションと情報デザイン
相手に伝わる表現と、その設計
コンピュータとプログラミング
処理の仕組み、モデル化、問題解決
情報通信ネットワークとデータの活用
情報の共有・蓄積、分析に基づく判断
解説メモ|一つの問題のなかで、四領域の知識を用いる
避難情報の伝達を考える際には、個人情報の扱いや責任、見やすい画面、条件に応じた処理、地域データの利用が関わる。四領域の知識を組み合わせることで、プログラムを書く技能を、社会で使われる情報の仕組みの検討に生かせる。入試に向けた学習でも、各内容が何を理解し、どの問題を解くために必要かを押さえると、生活や社会での利用につなげて考えられる。
出典:文部科学省、高等学校学習指導要領情報科関係資料。文部科学省
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生成AI:情報の検索と文章の生成を区別する
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
生成AIは、学習したデータのパターン等を用いて、入力に応じた文章や画像等を生成する。自然な文章を生成できることは、その内容の正確さを保証するものではない。
大規模言語モデルは、文脈に続く語句を確率的に生成する仕組みを基礎とする。出力は、事実を検索してそのまま写したものとは限らず、もっともらしい誤りを含み得る。モデルやサービスによって機能は異なるため、個別の出力は根拠資料と照合する。
検索や外部資料の参照を組み合わせたシステムを使う場合にも、生成された説明が、示された資料を正確に反映しているかを確かめる必要がある。
解説メモ|基礎知識が、回答を検討する手がかりとなる
概念の混同を含む回答でも、その分野の知識が乏しいと誤りに気づきにくい。基礎知識があれば、他の説明と比較し、反例を考え、追加の問いを立てることができる。AIを使う教育では、知識の習得を、出力を読んで判断する活動と結びつけることが重要である。AIが書いた文章を見分けることだけに目標を限定せず、内容を理解し検討する力を育てる。
出典:文部科学省、生成AIガイドラインVer.2.0。文部科学省
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2024年ガイドラインVer.2.0:人間中心の利用
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
文部科学省は2024年12月26日、初等中等教育段階における生成AIの利用に関するガイドラインVer.2.0を公表した。
教育で確認すること
学習目的と、発達や利用条件への適合を確認する。そのうえで、出力の誤りや偏り、個人情報・著作権等への対応を検討し、教師がどの場面で関与するかを明確にする。
出力を確かめる四段階
主張を一つずつ取り出す
根拠として示された資料の該当箇所を確認する
別の信頼できる資料と照合する
確認済み/不一致/未確認を分けて記す
引用が付いていることだけで、その引用が主張を支えるとは判断しない。
解説メモ|AIに任せる作業と、本人が学ぶ活動を区別する
要約機能を使う場合、自分で読む作業を代行させる授業と、自分の要約を比較・改善する授業では、学習者が行う活動が異なる。利用方針を授業に具体化するには、本人が担う部分、AIに任せる部分、出力を確認する部分を定める必要がある。校務での効率化についても、生徒の学習を支える利用とは目的と責任が異なるため、それぞれの用途に即して検討する。
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドラインVer.2.0」。文部科学省
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UNESCOの生徒向けAIコンピテンシー枠組み
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
UNESCOは2024年、生徒向けのAIコンピテンシー枠組みを公表した。
四つの次元
学ぶ内容
人間中心の考え方
人間の主体性、権利、社会への影響
AIの倫理
公正、責任、安全等
AIの技術と応用
仕組み、限界、適切な利用
AIシステムの設計
目的や必要に応じた設計・評価
各次元について、理解する・応用する・創造するという三つの進展水準が示されている。
解説メモ|使い方とともに、技術の目的や影響を検討する
指示を工夫して出力を得る技能を、誰の必要に応える利用なのか、誰に不利益が生じ得るか、誰が責任を担うかという問いに結びつけることが求められる。この枠組みでは、技術の仕組みと応用を、人間の主体性や倫理、社会への影響とあわせて学ぶ。便利に使う方法を知ることから、その利用や設計を評価できることまでを、教育の内容として捉えられる。
出典:UNESCO(2024), AI competency framework for students。UNESCO
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実験研究:AI利用中の成績と、自力で取り組む試験の結果
現在地|Ⅲ 技術と学習条件
Bastaniらが2025年に発表した研究は、トルコの一つの高校で、約1,000人を対象に数学学習を比較した。
条件
AI利用中の練習
AIなしの直後の試験
一般的なチャット型AI
成績が改善
対照群より低い結果
教師の知見を用いた支援型AI
成績が改善
対照群との差は統計的に明確でなかった
AIを用いない条件
比較の基準
比較の基準
支援型AIには、ヒント等を通して学習を支えることを重視した設計が用いられた。
解説メモ|支援による遂行と、支援後に使える理解を確かめる
AIを利用している間の改善と、利用できない試験の結果を比べると、支援中の正答がそのまま自力での理解を示すとは限らないことが分かる。この研究は、AIが何を代行し、何を学習者に考えさせるかという設計に注目する手がかりとなる。ただし、一校の数学授業で得られた短期間の結果であり、他教科や長期的な学習への適用には、その条件の違いを検討する必要がある。
出典:Bastani et al.(2025), PNAS。DOI
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Ⅳ 学習を保障する設計
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授業設計:学習者が担う活動を明確にする
現在地|Ⅳ 学習を保障する設計
AIを使った成果物と、本人が自力で説明できることを区別したうえで、授業のどの活動を学習者に担わせるかを具体化する。
本講座作成・AIを使う説明課題
段階
学習者が行うこと
使用前
自分の理解や疑問を整理し、説明案をつくる
使用中
別の説明やヒントを得て、自分の考えとの違いを検討する
使用後
採用した内容と理由を説明し、必要な部分を修正する
転移の確認
AIを使わず、新しい事例に概念を適用する
解説メモ|説明の変更や応用から、理解の変化を捉える
AIの操作履歴とともに、どの説明をなぜ変え、どの誤りに気づき、別の問題で何を使えたかを確かめると、学習者の理解に近づける。評価では、完成した文章の体裁に、授業中の説明、比較、応用を組み合わせる。こうした設計は、操作を細かく監視することを目的とせず、AIを利用した過程で本人が何を学んだかを捉えるために行う。
前頁の研究を踏まえた本講座の授業構想。
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学校全体で保障する:端末・教材・支援者・時間
現在地|Ⅳ 学習を保障する設計
2019年度補正予算で始まったGIGAスクール構想は、1人1台端末と通信環境を一体的に整備する政策であり、感染症による休校への対応の中で整備が前倒しされた。政策が学習の基盤を広げても、家庭の通信、相談相手、教材へのアクセスには差が残る。配備・利用・学習成果を区別し、誰がどの条件で学べるかを確かめる。
必要となる条件
学校で利用できる時間・通信・教材を確保し、読み上げ、字幕、言語、個人情報の扱いに配慮する。教師教育では、機器操作に加え、教科内容と情報活用を結ぶ授業設計、情報の信頼性・倫理の指導、学習成果の評価を扱う。養成課程、継続研修、校内の授業検討を結びつけ、生徒の成果物や困難をもとに指導を改善する。
解説メモ|自分で調べる課題を、学校での支援につなぐ
自由に調べて提出する課題には、検索語を考え、情報を読み、内容を構成する複数の活動が含まれる。学校で資料の読み方を共有し、途中で相談し、表現を検討する時間を設けると、家庭の援助が少ない生徒も取り組みやすくなる。自律的に学べるようにすることは、学習に必要な方法を教え、支援を利用しながら判断できる経験を積むことと結びついている。
出典:デジタル・デバイド研究、文部科学省の情報活用能力に関する方針。Emerald Publishing/GIGAスクール構想実現への歩み/GIGAスクール構想(冒頭の説明に対応)
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2026年の教育課程審議:体系的な学習と各教科での活用
現在地|Ⅳ 学習を保障する設計
2026年7月8日の文部科学省審議資料では、情報活用能力の向上に向け、小学校の総合的な学習の時間における情報領域や、中学校の情報・技術に関わる教科の再編等が検討されている。
検討の焦点
情報そのものを体系的に学ぶ内容を、各教科で情報を活用する学習と結びつける。そのために、授業時数上の位置づけを整理し、指導体制と教師の専門性を整えることが課題となる。
解説メモ|仕組みを学ぶ時間と、知識を使う場面を対応させる
情報の仕組みや倫理を体系的に学ぶことで、各教科の探究や表現を検討する知識が得られる。また、教科の課題で使った経験から、理解が曖昧だった点や新たに学ぶ必要にも気づける。専用の学習と教科横断的な活用を、このように往復できる教育課程が求められる。教科名や時間配分の変更を、その後の学習のつながりまで含めて検討することが重要になる。
本頁は2026年7月8日の審議資料の紹介であり、告示・全面実施済みの制度を示すものではない。
出典:文部科学省、当該審議資料。文部科学省
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研究関心を、情報環境と学習の関係へ深める
現在地|Ⅳ 学習を保障する設計
関心
具体化できる研究課題
AIと理解
ヒントや回答の提示が、学習者の説明・修正・応用にどう関わるか
多文化・言語教育
複数の言語や表現方法が、参加と意味形成をどう変えるか
メディア制作
作り手としての経験が、情報の選択や表象の理解にどうつながるか
教育格差
同じ端末から得られる学習成果の違いに、支援体制がどう関わるか
情報教育
専用の科目で学んだ知識が、各教科の探究でどう用いられるか
解説メモ|どの活動を支え、何の改善を確かめるかを定める
AIの教育的な効果を問う場合、文章作成の速さ、概念理解、自己説明、他者との議論では、確かめる成果が異なる。何を学ぶ授業で、AIがどの活動を支援し、どのような理解や行動が変わるかを明確にすると、研究の対象と評価方法を対応させられる。技術の名称を、学習者の活動と、それを支える指導や環境の問いへと具体化する。
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演習・根拠の検討・論述
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複数選択問題1:分かりやすい案内をつくる
現在地|演習・根拠の検討・論述
本講座作成・授業案
生徒が地域施設の案内を作っている。文章、地図、音声から表現方法を選べるが、受け手は「一般の人」とだけ設定されている。
マルチリテラシーズの観点から適切な改善を二つ選びなさい。
A.三種類の表現方法を使えば、文化や言語の違いを検討する必要はない。
B.誰がどのような状況で利用するかを考え、言語や既有知識の違いを検討する。
C.画像を増やすほど理解しやすくなるため、説明内容との関係は問わない。
D.伝える目的に応じて表現資源を組み合わせ、受け手の反応を踏まえて修正する。
E.文字による説明を残すことは、マルチリテラシーズの理念に反する。
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複数選択問題2:同じ端末、異なる学び
現在地|演習・根拠の検討・論述
本講座作成・比較事例
同じ端末と教材を使う二人の生徒のうち、一人は分からない内容を家庭で相談できる。もう一人は通信が不安定で、課題の意味を確認できる相手も少ない。
適切な分析をすべて選びなさい。
A.端末の保有状況が同じなので、デジタル・デバイドの問題は存在しない。
B.アクセス、利用に必要な技能や支援、得られる成果を分けて考えられる。
C.学校で相談や利用時間を保障することは、技術を学習に生かすための条件整備となる。
D.成果に差があれば、本人の意欲の違いから説明することが、理論上最も適切である。
E.家庭外の支援を整えることで、配備された機器を学習に生かす条件を補える。
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複数選択問題3:AIによる改善をどう判断するか
現在地|演習・根拠の検討・論述
本講座作成・研究結果の適用
AIを利用した練習では正答が増えたが、利用できない試験では同じ改善が見られなかった。学校は、この結果を授業の見直しに用いることにした。
適切な判断を二つ選びなさい。
A.AIが学習者のどの活動を代行し、どの活動を支えていたかを検討する。
B.練習中に正答が増えたため、概念理解と自力での問題解決も改善したと確定する。
C.一つの研究で差が見られたため、すべての教科でAI利用を廃止する。
D.AIを使わない課題を設け、理解した内容や別の課題への転移を確かめる。
E.学習者が便利だと評価したことを、自力で理解できることの代替指標とする。
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複数選択問題4:同じ事実を使った二つの記事
現在地|演習・根拠の検討・論述
本講座作成・材料型
記事甲は、地域の空き家を「高齢化による衰退」として紹介し、記事乙は、同じ空き家を「住民が文化活動に活用する資源」として紹介している。両方の記事で建物数は正確に示されているが、登場する人、写真、解決策は異なる。
メディア・リテラシーの学習として適切なものをすべて選びなさい。
A.数値が正しければ、記事がどのような問題像をつくっているかを比較する必要はない。
B.誰の経験が中心に置かれ、何が省かれているかを比較する。
C.同じ資料から別の記事を構成し、選択の違いによって意味がどう変わるかを検討する。
D.構成が異なる以上、どちらか一方は必ず意図的な偽情報である。
E.情報の正確さの確認と、表象や価値判断の分析を区別して行う。
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複数選択問題5:授業の目標とAIの役割
現在地|演習・根拠の検討・論述
本講座作成・対応関係の検討
目標と活動の対応が適切なものをすべて選びなさい。
A.概念理解を目指し、AIの説明を自分の言葉で言い換え、別の事例に適用する。
B.AIの社会的影響を学ぶため、便利だったという感想だけを提出させる。
C.情報デザインを学ぶため、見栄えのよさだけで作品を評価する。
D.批判的リテラシーを学び、AIが作成した地域紹介で、誰の経験が取り上げられていないかを検討する。
E.AIリテラシーを学び、利用目的、出力の限界、人間の判断と責任を説明する。
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実際の入試問題A:情報リテラシー教育と教師教育
現在地|演習・根拠の検討・論述
早稲田大学大学院教育学研究科・2023年度入学試験
学校教育専攻/一般入学試験・外国学生入学試験/設問Ⅰ(教育学)問題1(5)
原巻の選択指示(抜粋)
以下の5題中、1課題を選び、論述しなさい。
原文
学校教育における児童生徒への情報リテラシー教育の現状を概観し、教師教育の課題を論述しなさい。
字数と時間は授業用に別途指定し、原題の条件とは区別する。2023年度当時の制度・実施状況と、その後の変化を分けて読む。
出典:保管原巻PDF2–3頁に基づく転記。原巻PDF
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現在地|演習・根拠の検討・論述
設問が求める二つの作業
①児童生徒への情報リテラシー教育の現状を概観する。②その現状から、教師が何を学ぶ必要があるかを論じる。
確認:現状と課題が対応するか。教師教育の具体的な内容があるか。出題当時と現在の政策を混同していないか。
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小論文B:専門発展・リテラシーの違いを教育に用いる
現在地|演習・根拠の検討・論述
教育方法・メディア教育・多文化教育志望者向け/75分/1,300〜1,500字
材料:本講座作成・仮想授業。
生徒が生成AIを使って地域紹介を作成した。文章の正確さは確認したものの、登場する住民は日本語を話す成人に偏り、子ども、外国人住民、障害のある人の経験はほとんど含まれていない。また、文章中心の発表を理解しにくい生徒もいる。教師は、情報の誤りを訂正する学習を踏まえ、次にどのような活動を組み立てるかを検討している。
設問
(1)情報リテラシー、メディア・リテラシー、マルチリテラシーズの焦点の違いを説明し、材料の課題を分析しなさい。
(2)資料の選択、表現方法、学習者の参加を関連づけた授業改善を提案しなさい。生成AIに任せる活動と、学習者が担う活動を具体化すること。
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現在地|演習・根拠の検討・論述
授業後は、四つのリテラシーの定義と、それぞれの視点から同じ教育場面の何を問えるかを整理する。
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