
多文化教育
言語・文化の違いを踏まえ、学習と学校参加の条件を整える
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本講の中心問題:共通の教育を、 誰もが受けられるようにする
本講座作成・仮想事例
学校がすべての家庭に同じ日本語の進路資料を配布したところ、ある生徒は、その内容を保護者に説明する役割を担っていた。しかし、本人も奨学金や出願資格、学校ごとの違いまでは十分に理解できていなかった。
進路資料を選択のために使うには、内容を理解し、分からない点を質問し、複数の進路を比較できることが必要になる。同じ資料を受け取っていても、こうした条件には違いがある。
到達目標は、多文化教育を、文化への理解と学習機会の保障を結びつけた学校改革として説明できるようになることである。
学ぶ順序:Ⅰ 学校の標準と社会の多様性 → Ⅱ 学校改革の視点 → Ⅲ 言語と学習の保障 → Ⅳ 進路・家庭・地域への接続 → 自分で説明する。
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誰の文化が標準になるか
国民教育、同化、歴史的な多様性
学校の何を変えるか
バンクス、教育的公正、承認と再分配
学習をどう保障するか
日本語、教科学習、評価、母語
どこまで支援するか
就学、授業、学校生活、進路

Ⅰ 学校の標準と社会の多様性
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国民教育・同化・教育的公正
現在地|Ⅰ 学校の標準と社会の多様性
国民教育は、共通言語、歴史、制度、社会規範等を通して、社会の成員としての共通基盤を形成する。その際、何を共通の文化として選ぶかによって、学校で取り上げられにくい経験や、低く評価される文化が生じることもある。
同化主義は、少数者に多数派の言語・文化・生活様式への適応を強く求める考え方である。日本語を学ぶことと、母語や文化を手放すよう求めることには、教育上の意味の違いがある。
米国では、1954年のブラウン判決と公民権運動が、公立学校の人種隔離を問うた。1960〜70年代には、少数者の歴史や経験を教育内容に取り戻すエスニック・スタディーズの要求が広がった。しかし、教材に内容を加えるだけでは学習機会の格差は解消しない。多文化教育は、教授法、評価、教師の期待、学校組織も含む改革へ射程を広げた。 この問題意識を、後のバンクスの五つの次元につなげて読む。
解説メモ|共通言語の学習と、既に持つ知識・文化の尊重
共通言語は、他者との交流や進路を広げる資源となり、その学習には、子どもが既に持つ知識や言語も生かせる。教育的公正を考える際には、共通の学習目標を、教材、指導、情報提供の調整と結びつけることが重要になる。異なる出発条件を踏まえて学ぶ方法を整えることで、共通の教育を実際に受けられるようにする。
出典:National Archives/James A. Banks (2014), Curriculum Representation and Civil Rights, printed pp.4–5 / PDF pp.6–7
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日本社会の多様性を、歴史から捉える
現在地|Ⅰ 学校の標準と社会の多様性
日本の多文化教育を考える際には、近年の国際移動に伴う課題を、それ以前から存在する差別、言語、教育の問題と関連づけて捉える必要がある。
背景
教育を考える主な論点
アイヌ
言語・文化の継承、歴史の記述、学校での扱い
沖縄
言語、地域の歴史、戦争経験、国家との関係
在日韓国・朝鮮人
植民地支配の歴史、民族教育、名前・言語・自己理解
被差別部落
身分的差別の歴史、就学・進路、人権教育
ニューカマー等
移動、就学歴、日本語、教科学習、進路
参考:原稿の歴史的多様性の整理。比較軸は本講座による整理。多文化教育/出入国管理基本計画(第2次)「日系人の入国の増加」
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日本社会の多様性を、歴史から捉える
現在地|Ⅰ 学校の標準と社会の多様性
これらは同じ種類の「文化的少数者」ではない。民族・言語に関わる経験、植民地支配や地域の歴史、身分差別、障害、ジェンダー等は、それぞれ異なる制度と権利課題を持つ。集団名だけから個人の言語、希望、必要を推定せず、本人の経験と具体的な制度・慣行を確かめる。
解説メモ|歴史的な差別と、移住・定住に伴う教育課題をつなぐ
戦後の民族教育や同和教育には、失われた言語・尊厳や、差別によって制限された教育機会を回復しようとする蓄積がある。さらに、1990年施行の改正入管法で「定住者」が整備され、南米出身の日系人の来日や家族の生活が学校教育にも関わるようになった。就労者の受入れは、子どもの就学、日本語・教科学習、母語、進路を支える課題を伴う。来日時期や就学経験は同じ集団内でも異なるため、集団名だけで必要を決めない。
参考:原稿の歴史的多様性の整理。比較軸は本講座による整理。多文化教育/出入国管理基本計画(第2次)「日系人の入国の増加」
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Ⅱ 学校改革の視点
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バンクスの五つの次元:学校全体を改革する
現在地|Ⅱ 学校改革の視点
ジェームズ・A・バンクスは、多文化教育を学校全体の改革として捉え、五つの次元を示した。
出典:Banks & Ambrosioによる多文化教育の解説、原稿。StateUniversity多文化教育
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内容統合
多様な集団の経験・知識を教育内容に取り入れる
知識構成過程
知識がどの立場や前提から 構成されるかを検討する
偏見低減
集団への固定観念や否定的な態度を捉え直す
公正な教授法
多様な学習者が学習を達成できる指導を組織する
学校文化・社会構造の エンパワーメント
組織、評価、人間関係、参加の仕組みを公正なものに変える

バンクスの五つの次元:学校全体を改革する
現在地|Ⅱ 学校改革の視点
出典:Banks & Ambrosioによる多文化教育の解説、原稿。StateUniversity多文化教育
具体例から次元を見分ける
「多言語の進路資料を整える」「教科書で扱う歴史の視点を比較する」「教員間の相談時間を制度化する」を、それぞれ主に関係する次元へ対応づける。複数の次元にまたがる場合は、何を変える取組かを理由とともに説明する。
解説メモ|内容・方法・組織を関連づけて検討する
文化を紹介する教材を、授業の理解を支える指導や進路情報の提供と組み合わせることで、文化への理解と教育機会の保障を結びつけられる。言語支援の充実とともに、子どもの背景が日常の関係でどう評価されるかも検討の対象となる。五つの次元は、学校の内容・方法・組織を同時に検討するための視点であり、発達段階のような順序を想定していない。
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同じ単元を、内容・見方・参加の面から改善する
現在地|Ⅱ 学校改革の視点
本講座作成・授業例
地域の発展を学ぶ単元で、行政資料とともに、移住してきた人、長く暮らす住民、異なる言語を使う家庭の経験を取り上げる。
解説メモ|複数の資料から、同じ集団のなかの違いも学ぶ
外国につながる生徒一人に、国や民族の事情を説明する役割を任せると、本人が望まない自己開示や、代表者としての負担を求める場合がある。授業では複数の資料や語りを用い、同じ集団のなかにも異なる経験があることを検討する。個人が何を話したいかを尊重しながら、文化と生活の多様性を学べるようにすることが重要になる。
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多様な住民の経験を資料に加える
内容統合
「発展」が誰に何をもたらしたかを比較する
知識構成過程
集団への思い込みを、具体的な経験に照らして検討する
偏見低減
地図、写真、語彙支援、複数の表現方法を用いる
公正な教授法
学習を通して気づいた情報提供の問題を、学校で協議する
学校文化の改革

多文化教育の実践を、その目的から区別する
現在地|Ⅱ 学校改革の視点
グラントとスリーターは、多文化教育に関わる実践を、異なる目的を持つアプローチとして整理した。
アプローチ
重視する方向
例外的・文化的に異なる人々への教育
既存の学校で学ぶための適応・支援
人間関係
相互理解や肯定的な関係
単一集団の研究
特定集団の歴史・経験への理解
多文化教育
教育内容・方法・学校の改革
多文化的・社会再構成的教育
不平等を検討し、社会の変更に関わること
出典:齋藤眞宏(2006)による多文化教育論の比較検討。HUSCAP
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多文化教育の実践を、その目的から区別する
現在地|Ⅱ 学校改革の視点
解説メモ|同じ活動名でも、学習の焦点は異なる
「多文化交流」という名称のもとでも、学校のルールを学ぶ活動、互いの経験を知る活動、制度の改善を考える活動では、学習者に求めることが異なる。この分類は実践の目的を比較するものであり、学校改革の側面を示すバンクスの五つの次元とは区別する。必要な日本語支援を確保したうえで、文化理解や学校改革のどこまでを目指すかを考える手がかりとなる。
出典:齋藤眞宏(2006)による多文化教育論の比較検討。HUSCAP
混同しないための確認
「多文化教育」は、文化的多様性を尊重する行事に加え、教育内容・教授法・学校文化を公正なものへと改める学校改革まで射程に含む。「国際理解教育」は、国境を越えた相互理解・平和・協力等を主な課題とする。扱う対象には重なりがあるが、名称と目的は同じではない。
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フレイザー:承認と再分配を結びつける
現在地|Ⅱ 学校改革の視点
ナンシー・フレイザーは、社会的公正を考える際に、資源や経済的条件に関わる再分配と、制度化された低い評価や従属的な位置を変える承認の双方を重視した。
本講での教育への適用
具体例
承認
名前、言語、歴史、家族の経験を尊重し、対等な参加者として扱う
再分配
指導時間、専門職、教材、通訳、進学情報等を保障する
解説メモ|文化の尊重を、支援と意思決定への参加に結びつける
学校行事で母文化を取り上げることを、授業や進路相談で必要な資源の保障と関連づければ、文化の尊重を教育機会の拡大につなげられる。支援を提供する際にも、子どもを常に「できない側」に置かず、本人や保護者の経験を聴き、ともに内容を考えることが求められる。資源を得ることと、対等な参加者として判断に関わることを、あわせて検討する視点である。
出典:Fraser(2005)。教育への対応づけは本講座による。New Left Review
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Ⅲ 言語と学習の保障
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国籍、言語的な必要、就学の権利を区別する
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
学校改革の視点を、言語を通じた学習の問題に用いる。国籍、日本語の必要、教科の理解を区別すると、誰にどの支援が必要かを捉えやすくなる。
外国につながる子どもには、外国籍の子どもに加え、日本国籍で複数の言語環境に育つ子どもも含まれる。日本語の力や教育上の必要は、国籍と区別して、一人ひとりの経験から把握する。
外国人の子どもの保護者には、学校教育法上の就学義務は課されていない。一方、文部科学省の2026年改訂指針は、その就学機会を確保するため、自治体による状況把握、案内、関係機関との連携を求めている。文部科学省
解説メモ|学ぶ権利を、学校の選択肢と進路の条件から考える
就学を支えるには、多言語の案内と相談を用意し、本人・保護者が学校制度を理解できるようにする。学ぶ場には公立学校等に加え、母語・文化の継承を担う外国人学校もある。外国人学校の法的位置づけや卒業後の進学資格は一律ではなく、課程・指定・認定等によって異なる。文化の尊重とともに、費用、資格、転校・進学先への接続を確認する必要がある。外国人学校の卒業者は全員大学に進めない、という説明はしない。
文部科学省・大学入学資格ガイド
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2025年度調査:日本語指導を必要とする児童生徒
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
文部科学省が2026年5月25日に公表した調査によると、2025年5月1日現在、公立学校で日本語指導を必要とする児童生徒は84,759人であった。
国籍区分
人数
外国籍
73,313人
日本国籍
11,446人
合計
84,759人
該当する児童生徒が在籍する公立学校は12,668校であり、調査概要では、公立学校全体の約39%とされている。
解説メモ|児童生徒の分布に応じて、支援の配置を考える
対象者が多い学校では、担当者や教材を組織的に配置できる可能性がある一方、人数の急増への対応が必要となる。少人数が散在する地域では、一校で専門性を確保することが難しい場合もある。全国の人数を、地域や学校ごとの分布とあわせて読むことで、どこにどのような支援を届けるかという教育行政上の課題を具体化できる。
出典:文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」令和7年度。文部科学省
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カミンズ:日常会話と、教科学習を支える言語
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
カミンズは、日常的な対人コミュニケーションの力に関わるBICSと、学校で概念を理解し、説明・比較・推論等を行う力に関わるCALPを区別した。
学習場面
必要となる言語の働き
身近な出来事を会話する
表情、動作、共有された状況を手がかりに伝える
実験結果を説明する
条件、変化、比較、因果関係を言葉で表す
歴史資料を検討する
抽象概念を理解し、根拠と解釈を結びつける
解説メモ|授業の課題に即して、必要な言語支援を捉える
日常会話が流暢な生徒にも、教科の語彙や説明の組立てに支援が必要な場合がある。CALPは、読む・書く活動とともに、口頭での説明や議論にも関わるため、授業で何を行えるかを具体的に確かめることが重要になる。BICSとCALPを固定的な能力の上下や、全員が同じ年数で通過する段階と捉えず、課題と支援の条件から理解する。
出典:Cummins(2008), “BICS and CALP”。DOI
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JSLカリキュラム:日本語と教科の目標を組み合わせる
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
JSLはJapanese as a Second Languageの略である。滞在の長期化に伴い、日常会話ができても教科学習に参加しにくいことが課題となった。
日本語を学んでから教科へ進むという分離した指導を見直し、文部科学省は2003年に小学校編、2007年に中学校編をまとめた。日本語と教科内容を結び、学びながら必要な表現を身につける構想である。
本講座作成・理科の授業例
解説メモ|教科を学びながら、説明する日本語も育てる
実物や図から条件と変化を捉え、語彙や表現を補って説明すれば、教科の思考と言語学習を結べる。日本語の習得状況だけを理由に思考課題まで簡単にせず、必要な支援を確かめる。日本語指導と在籍学級で、目標・概念・表現を共有する。
出典:文科省「JSLカリキュラム開発の基本構想」/文部科学省
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教科の目標
条件の違いと植物の成長を関連づける
言語の目標
「同じ条件」「~に比べて」「~ためと考える」を用いて説明する
支援
実物・写真、比較表、語彙、対話、必要に応じた母語の活用

改訂版DLA:支援を得てできることを捉える
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
文部科学省の令和7年度改訂版DLAは、子どもが持つ複数の言語資源を踏まえ、一対一の対話と支援を通して、学習を支える力を把握するアセスメントである。
改訂版は、〈はじめの一歩〉〈聞く・話す〉〈読む〉から構成され、本人の状態に応じて必要な課題を選んで実施する。高校生への応用や、母語を用いた実施も位置づけられている。
解説メモ|理解や表現を助けた支援を、次の指導に生かす
DLAは、一人でできることと、説明や問いかけを受けてできることを捉え、その違いを指導の手がかりとする。この動的な評価は、発達の最近接領域の考え方と関わっている。どの支援が理解や表現を助けたかを記録し、次の授業や指導計画に生かすことが重要であり、日本語の習得状況から知的能力全体や障害の有無を判定する検査とは区別する。
出典:文部科学省、改訂版DLA「第1章 DLAの概要」。文部科学省
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「特別の教育課程」による日本語指導
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
学校段階
制度化と主な位置づけ
義務教育段階
2014年度から。必要に応じて、在籍学級の教育課程の一部に替えて日本語指導を行う
高等学校段階
2023年度から。特別の教育課程による指導を単位として扱える仕組みを導入
高校では、卒業に必要な単位数に算入できる上限は21単位である。必履修教科・科目、総合的な探究の時間、特別活動等に替えることはできない。文部科学省
解説メモ|教え方・評価・制度を、一人の学習過程につなぐ
必要な指導が既定の時間割だけでは収まらない場合、時間・目標・評価を教育課程上に位置づけることが課題となる。JSLは日本語と教科を結ぶ授業構想、DLAは支援の手がかりを得る評価、特別の教育課程は指導を学校教育に位置づける制度であり、同義語ではない。担当者が在籍学級と目標を共有し、参加の変化を確かめて計画を見直す。
出典:文科省「特別の教育課程」による日本語指導の位置付け/文科省「高等学校における日本語指導と学習支援」
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母語・継承語とトランスランゲージング
現在地|Ⅲ 言語と学習の保障
母語・家庭言語は、家庭や成長過程で形成された言語に関わり、継承語は、家庭や文化的背景から受け継がれる言語を指す。本人にとって使いやすい言語は、一つに限られるとは限らない。
トランスランゲージングは、学習者が持つ複数の言語資源を、理解・思考・表現のために柔軟に用いることを捉える考え方である。DOI
解説メモ|既に理解している内容を、新たな表現につなげる
母語で理解している概念を、図や対話を用いて、日本語での説明に結びつけることができる。母語は、学習の資源になるとともに、家族との会話や自己理解を支える意味も持つ。授業では、複数言語を使える環境に、何を理解し、どの場面でどう表現するかという目標を組み合わせることで、日本語の学習と既有の言語資源の活用を関連づけられる。
参考:基礎教材の母語・母文化教育の論点。留学生のための日本教育学入門ー基礎知識から最新動向へ
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Ⅳ 進路・家庭・地域への接続
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進路保障:学校段階を越えて、学習と選択を支える
現在地|Ⅳ 進路・家庭・地域への接続
授業を理解できる条件は、その後の進路選択にも関わる。学校内の言語支援を、家庭への情報提供や学校段階を越えた支援へどうつなぐかを考える。
令和7年度調査に示された、2024年度末の進路状況等は次のとおりである。
指標
日本語指導が必要な生徒
全中学生等・全高校生等
中学生の高校等進学率
91.5%
98.9%
高校生の大学等進学率
41.2%
75.0%
日本語指導が必要な高校生の中退率は6.4%であった。表中の「大学等」は、大学学部より広い区分を指す。
出典:文部科学省、令和7年度調査。文部科学省
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進路保障:学校段階を越えて、学習と選択を支える
現在地|Ⅳ 進路・家庭・地域への接続
解説メモ|進路を比較し、選べる条件を整える
進路の検討には、教科の学習に加え、受験制度や費用の理解、保護者への情報提供、来日時期等が関わる。進学率の差から原因を確定することはできないが、どの段階で何の支援が必要かを調べる手がかりとなる。説明会の翻訳、個別相談、奨学金情報、学習の継続を組み合わせることで、本人と保護者が実際に選択肢を比較できるようにすることが求められる。
出典:文部科学省、令和7年度調査。文部科学省
読み取り練習:数値が直接示す「公立学校の日本語指導対象者」を確認し、国籍別人数・在籍校分布・進路指標を別々に説明する。割合の差だけから原因を断定せず、言語支援、費用、情報、学校の助言等、追加で調べる条件を二つ挙げる。
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集住・散在地域と、家庭への情報保障
現在地|Ⅳ 進路・家庭・地域への接続
条件
支援を組織する際の課題
対象者が多い地域
人数に応じた教員・支援員の配置、初期指導、学校間の連携
対象者が散在する地域
巡回指導、広域連携、オンラインの活用、専門性の共有
家庭への情報提供
翻訳、やさしい日本語、通訳、質問できる相談経路
進級・転校・進学
指導内容、本人の力、必要な支援の引継ぎ
解説メモ|学校・自治体・地域団体の役割を結ぶ
重要な説明を子どもの通訳だけに任せず、保護者が直接質問できる条件を整える。学校は学習状況と進路の相談を受け止め、教育委員会・自治体は就学把握、専門人材・通訳の配置、福祉等への接続を担う。国際交流協会やNPOは、地域の日本語学習、居場所、生活相談を補える。支援を紹介して終えず、本人・保護者の意向と必要な情報共有の範囲を確認し、担当者と引継ぎ先を明確にする。地域団体の協力は、学校・行政の責任を代替するものではない。
参考:原稿の地域差・学校文化改革、文部科学省の就学促進指針。多文化教育文部科学省/文部科学省・日本語教育支援総合パッケージ
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2026年8月:日本語教育支援を継続的に組織する
現在地|Ⅳ 進路・家庭・地域への接続
文部科学省は2026年8月28日、「秩序ある共生社会の実現に向けた日本語教育支援総合パッケージ」を公表した。
主な施策の方向
就学促進と、プレスクール・プレクラス等による初期支援を進め、教職員定数や支援者、教育支援基盤を充実させる。地域日本語教育と、日本語教師の養成・研修も施策に含まれる。
同日、外国人の子どもの就学促進指針も改訂された。関連資料には翌年度の概算要求も含まれるため、公表された方針と、既に実施・成立している施策や予算を区別する。文部科学省
解説メモ|変化する必要を、担当者間で引き継ぐ
初期の日本語学習から教科学習、進学、地域生活へと、必要な支援は変化する。継続的に対応するには、担当者を配置し、学習状況や必要な支援を引き継ぐとともに、相談を受けて調整する役割を明確にすることが求められる。政策の方向を押さえたうえで、各段階で利用できる制度や資源を確認し、学校の支援体制に具体化する。
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研究関心を、学校改革の具体的な課題につなぐ
現在地|Ⅳ 進路・家庭・地域への接続
解説メモ|学習者の変化と、それを支える授業・組織
日本語の上達を捉える研究と、その学習を支える授業や支援体制の形成を捉える研究は、関連しながらも異なる問いを持つ。バンクスの枠組みからは、教材、教授法、学校文化の関係を検討できる。カミンズの視点からは、会話の評価と実際の教科学習との間に、どのような支援の必要があるかを問える。説明したい問題に応じて、理論の焦点を選ぶことが重要になる。
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日本語指導
言語の評価が、教科の目標や支援方法にどう結びつくか
教材・歴史教育
誰の経験が中心となり、どの視点が加えられ、内容がどう組み直されるか
保護者との連携
情報の提供が、質問・相談・意思決定への参加にどうつながるか
高校進学
学習、費用、情報、学校の助言が、選択肢をどう形成するか
散在地域
専門的な資源を学校に届ける仕組みと、その地域差

演習・支援の設計・論述
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複数選択問題1:文化紹介を学校改革につなぐ
現在地|演習・支援の設計・論述
本講座作成・仮想事例
学校が多文化週間を設け、各国の料理を紹介したところ、参加者から好意的な感想が得られた。一方、日本語指導担当者と教科担当者の連絡時間は設けられず、保護者への進路説明も従来の方法で行われていた。
バンクスの枠組みを用いた考察として適切なものを二つ選びなさい。
A.文化紹介で肯定的な感想が得られたため、学校全体の教育的公正も達成された。
B.内容統合や交流の意義を認めながら、教授法や学校組織の改善も検討できる。
C.多文化教育は文化の尊重を目的とするため、教科の学習達成は対象外である。
D.指導者間の連携と進路情報の利用条件を、学校文化・社会構造の課題として捉えられる。
E.学校組織を改善する場合、文化紹介には教育的な意味がなくなる。
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複数選択問題2:授業での理解をどう支えるか
現在地|演習・支援の設計・論述
本講座作成・学習場面
友人と自然に会話できる生徒が、社会科で「人口移動が地域経済に与える影響」を説明する課題に困っている。母語では、関連する経験を説明できる。
適切な指導をすべて選びなさい。
A.本人が持つ概念や経験を把握し、日本語の教科表現につなぐ。
B.日常会話が流暢なので、困難は日本語や課題の提示方法とは関係しないと判断する。
C.図、比較表、語彙、説明の型を用い、教科の思考活動に参加できるようにする。
D.CALPは書き言葉だけを指すため、口頭での説明には言語支援を行わない。
E.日本語指導担当者と教科担当者が、学習内容と必要な表現を共有する。
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複数選択問題3:制度説明の誤りを見つける
現在地|演習・支援の設計・論述
本講座作成・制度理解
次の説明のうち、不適切なものを二つ選びなさい。
A.外国人の子どもの就学機会を確保するため、自治体には状況把握や案内等が求められる。
B.外国人の保護者に就学義務が課されていないため、公立学校への就学支援は不要である。
C.日本国籍でも、日本語指導を必要とする児童生徒がいる。
D.高等学校の特別の教育課程による日本語指導は、2023年度から制度化された。
E.高校の日本語指導は、21単位以内であれば、必履修科目や特別活動を自由に置き換えられる。
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複数選択問題4:DLAの結果を次の授業に生かす
現在地|演習・支援の設計・論述
本講座作成・仮想材料
対話型の評価で、児童は最初、実験結果を説明できなかった。実施者が写真を示し、比較する点を問いかけると、条件と変化を結びつけて話せたが、教員は「最初は答えられなかったので能力が低い」と記録しようとしている。
改訂版DLAの考え方に合う説明を二つ選びなさい。
A.どの支援によって説明できたかを捉え、授業の指導方法に反映する。
B.評価中に支援した結果は無効なので、最初の反応だけを用いる。
C.一つの課題に答えられなかったことから、本人の知的能力全体を判断する。
D.一人でできることと、支援を得てできることを、学習の可能性の把握に用いる。
E.日本語で説明できたため、母語や就学経験を把握する必要はなくなる。
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複数選択問題5:進路研究の問いを深める
現在地|演習・支援の設計・論述
本講座作成・研究関心の具体化
ある学生が、日本語指導を必要とする高校生の進路に関心を持った。学校では進路資料を翻訳しているが、生徒によって、選べる進路や相談の利用状況に違いがある。
本講の知識を用いて研究課題を具体化する方針として、適切なものをすべて選びなさい。
A.翻訳資料があれば利用条件は等しいと考え、進路の違いを本人の意欲だけで説明する。
B.翻訳された情報が、保護者の理解と相談への参加にどうつながるかを問う。
C.教科の学習支援、費用、学校の助言が、進路の見通しをどう形成するかを問う。
D.外国籍の生徒全体を、同じ言語能力と同じ希望を持つ集団として扱う。
E.文化的背景の尊重と、具体的な進路資源の保障がどう関わるかを問う。
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過去問A:多文化共生社会における教育の役割
現在地|演習・過去問・論述
広島大学 令和8(2026)年度 人間社会科学研究科・2月入試
教育科学専攻 教育学プログラム 教育学コース・専門科目
「問1」からの原問抜粋
原問
多文化共生社会における教育の役割について論じなさい。
原巻の科目時間
自 9時00分
至 12時00分
3時間は原巻の科目全体の時間であり、本問単独の制限時間ではない。未確認の字数指定は加えない。
出典:保有過去問「15_1_202602_Educational Studies.pdf」物理p.2(表紙p.1)。原問確認用資料
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小論文B:専門発展・多文化教育として日本語指導を考える
現在地|演習・支援の設計・論述
多文化教育・日本語教育・教育社会学志望者向け/75分/1,300〜1,500字
材料:本講座作成・仮想事例。
ある学校では、日常会話が流暢になった生徒から順に日本語指導を終了している。通常授業の評価は長い記述問題が中心であり、担当者間で支援方法を共有する時間も少ない。文化紹介行事は行われているが、生徒や保護者が、授業や進路支援について意見を述べる場は十分に整っていない。
設問
(1)バンクスの多文化教育論と、カミンズのBICS・CALPの区別を説明し、材料に示された課題を分析しなさい。
(2)日本語指導、教科学習、評価、学校運営を関連づけた改善を提案しなさい。母語等の資源を尊重することと、共通の教育への参加を保障することに言及すること。
特定大学の過去問の転載ではない。本講座作成・仮想事例。大学公表の公式解答ではない。
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現在地|演習・支援の設計・論述
授業後は、バンクスの五つの次元、BICS・CALP、JSL、DLAについて、それぞれ定義と学校場面の例を一組にして説明する。
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